「サッカーではなく、格闘技のようだった」
平壌(ピョンヤン)でフルタイムを消化したキム・ムンファン(24・釜山アイパーク)の感想だ。
【写真】一触即発の乱闘寸前!? 韓国と北朝鮮選手の試合映像が話題
10月15日に平壌で行われた韓国と北朝鮮のワールドカップ2次予選は、中継もなく、韓国取材陣も入れなかったため、試合内容を知ることができない。それでも選手たちの証言から、状況を把握することはできる。
仁川国際空港を通じて10月17日に帰国した韓国代表DFキム・ムンファンは、「あんなサッカーは初めてだった」という言葉で北朝鮮戦を説明した。そして「北朝鮮の選手たちは悪口も多くて荒々しかった。試合の雰囲気が全体的に厳しかった」と述べた。
選手たちは一般的に、キックオフの90分ほど前にスタジアムに到着し、ピッチを見て回る。この時までも韓国代表の選手たちは、満員の観客が訪れると思っていた。
キム・ムンファンは「実際に僕たちは無観客試合ということをまったく知らなかった。ウォーミングアップのときも誰もいなかったので、キックオフ前に観客が入るのかと思ったが、選手入場のときも誰もいない。みんな慌てた。こんな経験は初めてだった」と、当時の心境を説明した。
それでも経験豊富な代表選手たちだっただけに、試合に集中するほうが重要だった。キム・ムンファンは「少し動揺したが、お互いに話して納得した。(ソン・)フンミン兄も、自分たちのプレーをしようと言って選手たちを落ち着かせた。国家代表選手なのだから、できる限り平常心を維持しようと努力した」と明らかにした。
公式Aマッチであるため、平壌の金日成競技場には韓国国旗が掲げられ、国歌も流れた。選手たちにとっても忘れられない瞬間だった。
キム・ムンファンは「国家代表として多くの試合に出て、国歌も歌ったが、今回は少し特別だった。他の時とは心境が違った。目を閉じて歌ったのだが、心がいっぱいになった」と述べた。
観客がいないなかで始まった試合では、北朝鮮選手たちの過酷な“悪口”が鳴り響いた。
キム・ムンファンは「北朝鮮の選手たちはベンチから気合がすごく入っていた。スタジアムに人がいなかったので声が響いたが、北朝鮮の選手たちがあまりに声を上げるから大きく聞こえた。悪口がすごかった。ほとんどが聞き取れるような悪口だったが、少し違うような気もした」と振り返った。
そして「スローインをしようとすると、横でずっと何か言っている。僕が驚いて笑っていると、他の選手が集まってきて戦おうとしたんだ。笑うなとも言われたし、殺伐としていた」と、北朝鮮の選手たちが悪口を使って韓国選手たちを刺激したと明かした。
試合後も北朝鮮の選手たちは、マナーのある行動をしなかった。試合中に激しく戦ったとしても、試合が終われば握手するのがフェアプレーの精神だが、北朝鮮の一部の選手は挨拶を拒否した。
キム・ムンファンは「北朝鮮の何人かの選手は挨拶しないで行ってしまった。他の所を見て、知らないふりをする選手もいた」と述べた。
悪口よりも酷かったのは、ラフプレーだった。北朝鮮選手たちはボールではなく、体を見てぶつかってくることが多かった。
キム・ムンファンは「サッカーではない感じだった。格闘技のようだった。ボールが空中に浮くと、そのままぶつかってきたり、膝で打ったりしてきた。彼らはボールを見るのではなく、人を見ろと言っていた。そんなサッカーは初めてだったので、大変だった」と、北朝鮮選手がラフプレーで一貫したことを証言した。
前半には、南北の選手が乱闘寸前になるシーンもあった。