端宗は500年続いた朝鮮王朝時代には27人の王のなかで、最も若くしてこの世を去った王だ。
16歳で短い生涯を終えており、叔父である世祖(セジョ、『不滅の恋人』のイ・ガン)によって死に追いやられた。
逆に、最も長生きした王は、82歳まで生きた第21代王の英祖(ヨンジョ)だ。
『トンイ』の主人公であるトンイ=淑嬪崔氏(スクピン・チェシ)の息子であり、『イ・サン』の主人公・正祖(チョンジョ)の祖父にあたる。長生きしているためか、『大王の道』『暗行御史パク・ムンス』『張禧嬪』などなど、登場する時代劇も多い。
英祖が長生きできた理由はどこにあるか。その秘訣は、質素な生活にあったと分析されている。
彼は27歳まで民間の家で暮らしており、母トンイの教育によって生涯慎ましさを持ち続けたとされる。朝鮮王朝時代の王は、一日5食が普通だったが、英祖は一日3食を心がけ、さらに野菜中心の食事をとるようにしていたそうだ。
長命な王としては、太祖(テジョ)73歳、高宗(コジョン)67歳、光海君(クァンヘグン)66歳、定宗(チョンジョン)62歳を挙げることができる。27人の王の平均寿命は46歳だった。
『不滅の恋人』で幼い王を追い出して自らが王位についたイ・ガンこと世祖は、史実でも野心にあふれた強烈な人物だが、意外にも王妃や側室が一番少なかった王として記録に残っている。王妃と側室はそれぞれ1人ずつだけだった。
『チャングムの誓い』で登場する中宗(チュンジョン)が王妃3人、側室9人の計12人を抱えていたことと対照的だ。この12人が最も多い数字で、成宗(ソンジョン)や太宗(テジョン)もトップタイとなっている。
ちなみに『不滅の王』でイ・ガンやイ・フィの兄で、上王の父でもあるイ・ヒャンのモデルとなっているのは文宗(ムンジョン)だ。その文宗は王位継承者、つまり世子(セジャ)や世孫(セソン)として過ごした期間が長い王だった。
文宗は実に30年間も王位継承者として過ごした。朝鮮王朝27人の王のなかでも3番目に長い期間だ。しかし王になってからわずか2年3カ月で崩御している。
世子時代は次の王になるための厳しい教育を受ける。
世子期間が長いと在位期間が短くなるのは、寿命を考えれば当然のことだが、王に比べて立場が不安定な世子が過度のストレスを受けていたことも事実だろう。周囲の期待やねたみを一身に背負う世子期間は、もしかしたら寿命にも影響を与えていたのかもしれない。
それは1位の純宗(スンジョン、33年)、2位の景宗(キョンジョン、31年)も在位期間が短いことからもうかがえる。
いずれにしても最高権力者である王は、韓国時代劇で主要人物になることも多く、あまり登場しない作品であっても「どの王の治世の物語か」は作品の重要なポイントとなる。
彼らについて知れば、さらに韓国時代劇を楽しめるのではないだろうか。
(文=慎 武宏)