9月1日から公開される映画『寝ても覚めても』(濱口竜介監督)。
芥川賞作家・柴崎友香の同名恋愛小説を映画化し、「第71回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門にも出品されたこの作品で、ヒロインを務めるのが女優の唐田えりかだ。
2014年にアルバイト先のマザー牧場でスカウトされ芸能界入り。翌2015年に出演したCMが話題になり、同年にはドラマ『恋仲』にも出演。その後も数多くのドラマに抜擢され、現在はファッション誌『MORE』の専属モデルとしても活動している。
また、2017年からは韓国にも活躍の場を広げている。唐田が出演したLG電子のスマートフォンのCMも大きな反響を呼び、「広末涼子に続く清純派女優」と評価されるなど韓国でも人気を広げつつある。
『寝ても覚めても』は、そんな唐田が本格演技デビューを果たし、自身初のヒロインを務めた作品だ。
「演技は自分の中から勝手に出てくるもの」
日本と韓国で注目を集める若手女優は、この作品を通じて何を感じたのか。都内某所でインタビューした。
「不思議と、難しいと思うことがなかったんです」
手始めに『寝ても覚めても』の撮影の感想を訊くと、唐田はこう切り出した。
映画で唐田が演じたのは、東出昌大が一人二役を務めた“同じ顔の男”亮平と麦(ばく)の間で揺れ動くヒロイン・朝子。
筆者も試写会に訪れたが、朝子の苦悩や葛藤を複雑な心境を演じるのは簡単なことではないと感じていただけに、その言葉は意外でもあった。
唐田はなぜ、朝子を演じることに難しさを感じなかったのか。
「実は、撮影に入る前から濱口監督に、“何も考えないでください”と言われていたんです。 “ああしよう、こうしようと考えず、周りの方の芝居を見てください”と。
撮影期間中は、その監督の言葉通り共演者のお芝居を見ることに集中して、自分の演技に対して完全に“無”の状態になっていました。そうして演技をしてみると、自分の中から自然に出てくるものがあったんです。そして、その演技にはウソがなかった。
演技は頭で考えて演じるんじゃない。勝手に表に出てくるものなんだ。そのことに気付けたからこそ、朝子を演じることにも難しさを感じなかったんだと思います」
そして、その経験が女優としての自信にもつながったという。
「もともとはモデル志望で、演技に対しては苦手意識が強かったんです。でも、『寝ても覚めても』と濱口監督に出会えたおかげで、お芝居に対して前向きになれました。
いまは、ようやく女優としてスタートラインに立てた気がしています。この作品に出演できたことは、私にとって大きな転機になりました」
そんな『寝ても覚めても』は、今年5月の「第71回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門にも出品され、唐田もカンヌのレッドカーペットを歩いた。
唐田にとっては初の映画祭でもあったが、緊張や不安は感じなかったという。