先月10月10日、国会の文化体育観光委員会・国政監査に証人として出席したときまでは、ソン監督も「東京五輪まで最善を尽くしたい」と名誉回復に前向きだった。
しかし、10月23日にチョン総裁が「(野球代表に)専任監督制は必要ないと思う。 TV中継で選手を把握する監督は、経済の現場に一度も行かず経済を論じる経済学者のような行動」と公開的に私見を明らかにしたことが、ソン監督に辞任を決心させる決定的なきっかけになったものと思われる。
文化体育観光委員会の与党幹事である「共に民主党」のソン・ヒェウォン議員は、オンラインポータルサイトのコメントを根拠に、「1200万の野球ファンたちがソン監督の辞任を望む。選手選抜に問題があったことを認めなければ、東京五輪まで監督を継続することができないだろう。ト・ジョンファン体育観光部長官や次官も同じ考えだろう」としながら、代表監督の人選に事実上の外圧を行使した。
さらに、国政監査に証人として出席したチョン総裁まで、ソン議員と事前に話を合わせたような態度を一貫し、ソン監督と専任監督制度そのものを否定する形となった。
こうしたことによってソン監督の立場はなくなり、ソン議員が主張する「1200万の野球ファン」たちと前・現職の政治家たちが、韓国を代表する投手であり、韓国野球代表としては初となる専任監督を事実上引きずり下ろすことに成功した。
ソン監督の突然の辞退によって、コーチングスタッフも解体となった。イ・ガンチョル首席コーチはKTウィズの監督となって自然に代表コーチ職から下りることになり、他のコーチたちもソン監督が選んだスタッフだっただけに事実上、解体されるものと見なければならない。
とある代表コーチは「(ソン監督とは)11日午後にちょっと通話したが、そのときは特にそんな話はなかった。知人たちも最近まで辞任を積極的に引き止めたが、精神面であまりにも大きな傷を負った。ソン監督の選択を尊重するしかない」と、ため息をついた
太極旗をつけてアジア大会で金メダルを獲得した選手たちの汗も踏みにじられた。
今回の事態は、今後の野球韓国代表のチーム運営にも大きな影響を与えると思われる。ヒステリックなファン層を味方につけた政治論理が、野球を通じて国に奉仕しようとした代表監督の位相を地に落とした。選手や監督たちが、誰にも歓迎されない代表チームにあえて参加する理由も消えた。
どんな状況であっても、政治とスポーツは別であるべきだとするソン監督の訴えが、空虚なリフレインとして響く。