「奇跡」という言葉しか思い浮かばないような瞬間だった。全北現代が7度目のKリーグ制覇を成し遂げた。
ジョゼ・モライス監督率いる全北は12月1日、全州ワールドカップ競技場で行われたKリーグ最終節で江原FCとホームで対戦し、1-0で勝利した。
同時間、蔚山現代が浦項スティーラースに1-4で大敗し、全北と蔚山が勝ち点79で並んだが、得点で全北(72得点)が蔚山(71得点)を上回り、優勝トロフィーを手にした。
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全北は創設から初めて3連覇を達成し、城南FCが企業クラブの一和(イルファ)時代に成し遂げたKリーグ最多優勝回数(7回)に並んだ。2009年の初優勝から10年で作り上げた偉業だ。
最後の最後まで優勝の行方はわからなかった。この日の試合前まで、全北の自力優勝は不可能だった。蔚山との勝ち点差3を追っていた全北は、江原に勝利し、蔚山が浦項に敗れることを待つしかなかった。モライス監督が試合前、「奇跡が起きることを願う」と話したほどだ。
全北は前半39分、ソン・ジュンホのヘディングゴールで先制。後半も安定した試合運びで、試合中から蔚山と浦項の結果に注目が集まった。後半序盤から全州ワールドカップ競技場では、全北のプレーに関係なく歓声が上がったりした。特に後半10分には、浦項が2-1でリードしているというニュースが電光掲示板に映し出され、大きな声が上がった。
全北ファンは「浦項、浦項」と叫んで歓喜した。後半42分に浦項がダメ押しのゴールを決めると、熱気はさらに上昇。スタジアムが割れるような歓声が上がった。先に試合を終了した全北の選手たちは、電光掲示板に流れる蔚山-浦項戦を見守った。
全北の優勝が決まった瞬間、モライス監督は選手やコーチングスタッフと抱擁し、喜びを分かち合った。選手たちはトロフィーを持ってピッチを駆け回り、最後までファンと感激の瞬間をともにした。
まさにハッピーエンドで今季を終えた全北だが、今シーズンのスタートはあまり良くなかった。
2014年から2018年までの5シーズンで4回も優勝した全北だが、今年控えて変化に直面した。全北のサッカーは、「タッチゴ(ひたすら)・コンギョク(攻撃)」という意味から“タッコン・サッカー”と呼ばれるが、それを指揮したチェ・ガンヒ監督が中国スーパーリーグに移ったのだ。
14年間をともにしたチェ監督と別れた全北は、他のチームを圧倒することができなかった。韓国クラブの指揮を初めてとることになったモライス監督に対する疑問符も、少なからず投げかけられた。7月には得点ランキング首位を走っていたストライカー、キム・シンウクが中国の上海申花に移籍し、攻撃パターンを1つ失った。
さらに“外国人選手の残酷史”にも苦しめられた。
リカルド・ロペスがそれでも自分の役割を果たしたが、残りの外国人選手は目立った活躍を見せることができなかった。アタッカーのカルロス・アドリアーノが負傷で早々に離脱すると、チアゴ・アウベスも100%のコンディションではなかった。夏の移籍市場で連れてきたサミュエル・ローザも、Kリーグに適応しそうな時期に負傷した。
そんな空白を韓国人選手たちが埋めた。
仁川ユナイテッドから全北に移籍したムン・ソンミンが10G10Aを記録する活躍を見せながら、全北の新たなスターとなった。守備ではゴールキーパーのソン・ボムグンがいた。ソン・ボムグンは今季全試合に出場し、全北のゴールをしっかりと守った。キム・ミンヒョクとイ・ジュヨンといったディフェンダーも熱心に走った。
チェ監督が離れた後も全北を守った“レジェンド”イ・ドングッは、前人未到の攻撃ポイント300(224ゴール、77アシスト)を達成し、Kリーグの新たな歴史となった。
モライス監督は優勝が決まり、「あまりにもうれしい。韓国に来て一番うれしい日だ」とし、「自分たちが頑張れば奇跡は起こると考えた。初めて全北の監督になって、負担や緊張感が多かった。イ・ドングッ、ホン・ジョンホなどのベテランが多くの助けをくれた。ワンチームにならなければならないと強調していた部分が、良い結果につながったようだ」と満足感を表わした。
2019年のKリーグは、最終節まで激しい順位競争が繰り広げられ、劇的な全北の優勝で幕を下ろした。
今年は1部リーグ228試合に計182万7061人が訪れ、1試合当たりの平均観客数は8013人を記録。2013年に昇降制が導入されてから、初めて平均観客数8000人を超えた。ロシアW杯でドイツ戦に勝利してから盛り上がり続けた韓国サッカーの熱気が、今年はKリーグにまで広がり、興行面でも誇れるシーズンとなった。
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