バレンシアの新監督に就任したアルベルト・セラーデス監督は、1975年生まれの若き指導者だ。スペインのU-16~21代表の監督を5年間務め、有望な若手を育成した経験がある。
アンダー代表監督時代、セラーデス監督は4-3-3や4-2-3-1といったフォーメーションを主に採用した。
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2014年にUEFA U-21欧州選手権予選に出場した際には、プレーメーカーとして攻撃的な才能に秀でたイスコを中心とする戦術を披露した。イ・ガンインもイスコに似たタイプの選手であり、セラーデス監督はそのような選手の生かし方を良く知っており、有望な若手を積極的に起用している。
実際にセラーデス監督は就任後、前述のような変化を予告した。
マルセリーノ・ガルシア・トラル前監督は、守備的な4-4-2のフォーメーションを堅持し、中央にファイター型MF2人を起用してツートップを通じたカウンター戦術に徹底した。しかしセラーデス監督は、以前から自身の好む4-3-3、4-2-3-1のフォーメーションに切り替えると公言した。
イ・ガンインは攻撃に比べると守備力が不足するため、3列目に守備的MF2人が控える4-2-3-1で最も優れた能力を発揮する。U-20W杯に出場したときも、最前線のFWオ・セフンのすぐ後ろを自由に動き回り、才能を見せつけた。
イ・ガンインの能力を見抜いたチョン・ジョンヨン監督の「ガンインは、2列目で自由を与えられることで輝く選手だ。シャドーストライカーや攻撃的MFとして起用しなければならない」との発言からも、セラーデス監督との相性には期待できそうだ。
4-3-3でも大きくは変わらない。他2人のMFが守備を負担してくれることで、より攻撃に専念することができる。フォーメーションが4-4-2から変わっただけで、イ・ガンインには朗報となるのだ。
新監督就任とともに、イ・ガンインの立場には変化が見られている。9月15日、セラーデス監督初采配となったバルセロナ戦で、イ・ガンインは後半22分から途中出場した。トップチーム昇格後、リーグ戦では最も長い時間の出場となった(試合は2-5でバルセロナの勝利)。
セラーデス監督の代理人は、ピーター・リム会長と良好な関係を持つジョルジュ・メンデスである。イ・ガンインを大切にするリム会長の意見が十分に反映され、今後もイ・ガンインに十分な出場時間が与えられる可能性は高い。
しかしイ・ガンインには、大きな責任がのしかかるといっても過言ではない。
マルセリーノ監督は昨シーズン、バレンシアをリーグ4位に押し上げ、UEFAチャンピオンズリーグ出場へと導いただけではなく、カップ戦では優勝を成し遂げる手腕を発揮した。リム会長は、マルセリーノ監督がイ・ガンインやフェラン・トーレスのような有望株の起用に慎重である理由から解任した。
サポーターからすれば、十分な理由もなくマルセリーノ監督が解任されたこともあって、新監督には納得できるほどの結果を求めるだろう。セラーデス監督はもちろん、イ・ガンインもチャンスでは自身の能力を示さなければならない。
上手く行かないようであれば、監督のみならずイ・ガンインも批判にさらされる懸念がある。
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