“悪夢”を断ち切ったリュ・ヒョンジン、防御率1.66とし「サイ・ヤング賞」に前進

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偉業達成への困難を、またひとつ乗り越えた。誰も反論できない2019シーズン最高の投手、リュ・ヒョンジン(ロサンゼルス・ドジャース)だ。

“クアーズ・フィールド悪夢”(6月29日のコロラド・ロッキーズ戦、4イニング7失点)から脱出した。

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リュ・ヒョンジンは8月1日(日本時間)、クアーズ・フィールドで行われたコロラド・ロッキーズとのアウェー戦に先発登板し、6イニング80球を投げ、被安打3の無失点でしっかりとマウンドを守った。

0-0の同点で登板を終えたため勝ち星はつかなかったが、6月29日に同じ場所で経験した4イニング7失点という悪夢を見事に断ち切った。ロッキーズは最精鋭の選手たちでラインナップを揃えたが、リュ・ヒョンジンは“秘蔵の武器”で対抗した。

封印していたスライダーを公開、“天敵”を制圧

リュ・ヒョンジンにとって、今年のスプリングキャンプのテーマはスライダーだった。カットファストボールよりも遅いが、横への動きが大きいスライダーを身につけようと、ブルペンピッチングに臨んだ。スライダーを使って左打者の外角を征服する絵を描いた。

だが順調には行かなかった。捕手オースティン・バーンズに向かって投げたスライダーは、ホームプレートの前で落ちたり、ストライクゾーンを大きく外れたりした。当時リュ・ヒョンジンは「パトリック・コービンが投げるスライダーと同様の軌跡をイメージしている。ブルペンで少しずつ投げているが、まだ慣れてない」と、新しい球種の習得が容易でないことを伝えた。

同時に「(捕手の)バーンズもスライダーを投げると驚いた。どんな球を投げたのか聞いてきたよ。バーンズはカットファストボールがあるのに、スライダーまで投げる必要があるのかという意見だった」と、スライダー習得について悩んでいた。

結局リュ・ヒョンジンはシーズン開幕を前に、スライダーを封印した。かわりに4つの球種(ストレート、カットファストボール、チェンジアップ、カーブ)の精度をさらに高めることに焦点を合わせた。

ところが、その封印していたスライダーがクアーズ・フィールドで登場した。

(写真=ドジャース公式Twitter)リュ・ヒョンジン

左打者チャーリー・ブラックモン、ヨンダー・アロンソ、トニー・ウォルターズなどを相手に、外角に抜けていく80マイル(約128キロ)台のスライダーを混ぜて投げ、相手を混乱させた。リュ・ヒョンジンを徹底分析していたロッキーズ打線は、予想外のスライダーを前に、なす術がなかった。

リュ・ヒョンジンの“天敵”であるノーラン・アレナドも押さえた。

同試合前まで、リュ・ヒョンジンを相手に打率0.609(23打数14安打)、本塁打4本、OPS(出塁率+長打率)1.944を記録していたアレナドに、1度の出塁も許さなかった。最初の対戦となった1回裏、アレナドを3塁ゴロで討ち取ると、4回裏はライトフライ、6回裏はショートゴロと、完全に攻略した。

圧倒的な防御率1.66…サイ・ヤング賞にまた一歩前進

リュ・ヒョンジンはこの日の無失点ピッチングを通じて、防御率を1.66まで引き上げた。ナショナルリーグ防御率部門で2位グループを0.7点差で引き離し、議論の余地のない「ナンバーワン」となった。

もちろん勝利数にブレーキがかかったのは、やや残念だ。6月5日のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦から同日までの10試合で、防御率1.87と大活躍しているが、打線の援護をもらえずに3勝を追加するにとどまった。

それでもサイ・ヤング賞(ナ・リーグとア・リーグのそれぞれから同年最も活躍した投手1人ずつが選手)の受賞には、大きな問題にはならない見通しだ。最多勝がサイ・ヤング賞に決定的な影響を与えていたのは、10年前の話だ。

昨年のナショナルリーグのサイ・ヤング賞の投票結果が、それを証明している。

受賞者ジェイコブ・デグロム(ニューヨーク・メッツ)は10勝9敗に終わったが、防御率は1.70を記録した。18勝7敗、防御率2.53のマックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)を圧倒している。デグロムは全米野球記者協会のサイ・ヤング賞投票で、30の1位票のうち29票を独占した。

先発投手の勝利数は、野手の打撃と守備に少なくない影響を受ける。実際に、現在ナショナルリーグ最多勝トップは、リュ・ヒョンジンよりも防御率が2倍近く高いスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ・防御率3.26)の14勝だ。勝利数で先発投手を評価する時代は、もはや過ぎ去った。

リュ・ヒョンジンはシーズン終了まで、残り9試合ほど先発登板を残している。今後も1点台の防御率を維持し、15勝前後を記録すればサイ・ヤング賞は受賞したも同然だ。

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