早くも1年4カ月が過ぎたが、あの感動と歓喜は記憶に新しい。2018年、平昌五輪を通じてカーリングを人気スポーツのひとつへと押し上げた“メガネ先輩”キム・ウンジョン(28)だ。
栄光の後には、隠れた傷があった。キム・ウンジョンがスキップとして導いた「チーム・キム」(慶北体育会女子カーリング)は、長らく続いた指導者らの悪行を告発し、苦悩の日々を過ごすことになった。
その間キム・ウンジョンは結婚と妊娠を経験したが、胎教をあきらめてもチームを守るという気持ちが強かった。
6月24日に大邱(テグ)市内のカフェで『スポーツソウル』と会った彼女は、「私たちが最初に告発文を発表したとき、一部からは“お金のためにそんなことをするのか”という声があった。選手の人権問題として見てもらえないのかと思い、(妊娠中だったが)無理にでも声を上げたかった」と振り返った。
その後、今年2月に文化体育観光部が合同調査を行った結果、チーム・キムの指導者たちによる悪行がすべて事実であったことが明らかになった。懸念を払拭したキム・ウンジョンは5月19日、息子を出産した。チーム・キムはキム・ウンジョンが出産のためチームを離れると、キム・ギョンエがスキップを担当しながら国内外の大会に復帰した。
チーム・キムは、すぐに完全体になる。
来る7月1日から11日まで江陵カーリングセンターで行われる「韓国カーリング選手権大会」に出場する。同大会は2019-2020シーズンの国家代表選抜を兼ねる。昨年、韓国代表の座を「春川(チュンチョン)市役所」に譲っただけに、今シーズンこそ取り戻すという意志が強い。
“ママさん選手”となったキム・ウンジョンは、選抜戦には候補として登録する。妊娠中もキム・ギョンエのアドバイザーとしての役割を果たした彼女は、まだ無理をしてリンクの上に立とうとはしない。ただスキップの経験とノウハウが非常に重要なスポーツであるだけに、仲間の側にいる予定だ。
本格的に復帰する時期は、9~10月としている。
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新米ママの大変さは計り知れない。ひとまず“嵐の育児”が続く。ところがキム・ウンジョンは、「子育てが大変だと思っていたが、思ったより(夜中に起きず)よく眠る。空腹のときだけ起きる。早くも親孝行をしてくれるようだ」と、母親としての笑顔を浮かべた。彼女が「親孝行」という単語を使ったのは、お腹にいるときからだ。
キム・ウンジョンは結婚後、なるべく早く子供を作る計画を立てた。ますます競争が激しくなる2022年の北京五輪に向けて、空白期間を最小限に抑えたいという責任感からだった。
彼女は「計画通り(妊娠が)できなければ、4年後のオリンピックの後に出産計画を立てることも考えた」とし、「でも計画通りになった。本当にありがたくて、胎名(お腹のなかの赤ちゃんにつける名前)を“サンキュー”にした」と述べた。
カーリングに対する情熱から始まったことだが、自分のビジョンを尊重してくれた夫にも感謝の気持ちを忘れない。キム・ウンジョンは「妊娠中、(指導者の議論で)大変だったとき、私があまりにも元気がなくて夫が健康について心配した。そのときは“自分のことだけ考えているのではないか。子供と夫を考えながら調整しよう”と念を押した」と振り返った。
明確な目標が生まれた。これまでカーリングに限らず、多くの種目で活躍した女子選手たちが結婚・妊娠によって、現役生活を終える傾向を残念がった。
キム・ウンジョンは、「最もたくさん受けた質問が“出産しても現役を続けるのか”という言葉だった」とし、「そのような認識を変えたい。ママさん選手として本当に成功したいと思う。もちろん多くの欲を出せば、チームと自分自身が気負う。ママという修飾語を離れて、カーリング選手キム・ウンジョンとして再挑戦したい」と語った。
また、「(カナダのカーリング選手である)ジェニファー・ジョーンズも2人の子供を育てながら、選手生活をしている。カナダは(選手福祉などが)とても良く、彼女が試合で勝った後、子供の名前を呼びながら“ママに会いたいでしょ?”と言いながら挨拶する姿が印象的だった」とし、「私たちの文化は(子供を育てる選手が)気後れするときがあるが、それを変えたい」と強調した。
出産と育児で忙しい毎日を送っているのに、今は体がうずうずする。