オ・スンファンは2018年2月にテキサス・レンジャーズと2年最大925万ドル(約10億円)で契約を結ぶ予定だったが、身体検査の結果を理由に契約が失敗に終わった。紆余曲折の末、トロント・ブルージェイズと2年最大750万ドル(約8億2000万円)で契約し、シーズン途中にコロラド・ロッキーズにトレードされた。
契約の白紙化とトレードは、選手生活で初めて経験したこと。健康であるときに韓国に戻り、自分の価値を再証明したい欲が出るしかない状況に追い込まれたのだ。5年間の経験を通じて、「力があるときに戻ってきてこそ言葉に説得力が生まれる」という考えが固まった。
オ・スンファンは「メジャーリーグに進出した日本人選手は、大きく年俸を気にしない」と話す。そのためFAを取得した大型選手の年俸問題が大きなイシューにならない。韓国野球委員会(KBO)リーグの選手たちが海外進出を選択する理由として、年俸が大きなウエイトを占めているという話とは、真逆の話だ。
実際にイチローは2000年シアトル・マリナーズに入団したとき、3年総額1500万ドル(約16億円)で契約を結んだ。年平均5億5000万円は、オリックス時代の年俸(5億3000万円)と大きな差はなかった。
オ・スンファンは「日本は2年目でも3年目でも実力が飛び抜けていれば、10億円を軽く超える。FAを取得したときに欲張らない構造」と説明した。年俸に見合う活躍ができなければ、減額の規模も想像を超えるため、韓国と日本の選手ではメジャーリーグ進出の理由自体が違う。
日本選手は心から自分の可能性を証明するために、メジャーリーグに挑戦する。駄目なら帰ればいいという認識もあり、アメリカで失敗してもプレミアムをのせて交渉につくことができ、韓国との差は大きい。
KBOリーグのトレンドとなっている“ベテラン冷遇”と、昨年から吹き荒れるFA市場の不況などの現実を見たオ・スンファンは、「FA上限制を導入するよりも、若い頃から実力に合った給与を支給するシステムがより合理的であると考えている。日本やアメリカの選手はうまくいけばたくさんもらい、そうでなければ減ることを当たり前に受け入れる。韓国にもそのようなシステムが必要だ」と強調した。
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例えば、KTウィズに入団したイ・デウンが今年15勝、防御率2点台を獲得すれば“2年目最高額”を与えるのではなく、同じくらいの結果を出した投手と同じ年俸にすべきということだ。前例に縛られて革新がなければ、球団と選手の間で自尊心の争いが深刻化するということが、オ・スンファンの懸念だ。
彼は「韓国野球全体のなかで、私は何者でもなく、ただの投手のひとりだ。でもKBOリーグを経験した後に海外でプレーしながら、韓国の選手たちの意識が少し変わってほしいと考えたりした。年俸を上げたいのであれば、それに見合った実力だけでなく、ファンサービスなども備えなければならばならない。どちらが先と議論すること自体が無意味である。このような話を虚心坦懐に後輩たちとしてみたい」と話した。
韓国における、ベテラン冷遇も文脈は同じだ。