Kリーグの浦項スティーラーズは、リーグ1位の蔚山現代との“東海岸ダービー”を4-0で圧勝した。
“韓国のスター軍団”と称される蔚山現代は、現在Jリーグで圧倒的な強さを見せている川崎フロンターレ所属の家長昭博や、元日本代表でサガン鳥栖所属の豊田陽平が所属していた日本でも馴染みのあるチームだ。
ただ2013年と2019年にリーグ優勝目前で浦項に敗れ、2度も苦汁を飲まされた経験を持つ。この過去は蔚山にとっては悪夢だが、浦項にとっては非常に輝かしい記憶だ。
浦項のキム・ギドン監督は10月18日に行われた蔚山現代戦に、昨シーズン最終戦を4-1で勝利したときの服をまとい臨んだ。今シーズンは1度も勝てていない“東海岸ダービー”に向けてゲンを担ぎ、狙い通りの勝利を収めた。
浦項は先日の国際Aマッチ期間も、蔚山とのダービーマッチに向けて着実に準備を行ってきた。戦力を整える時間的な余裕もあった。しかし選手たちにとって、その時間は“毒”となった。
この間のトレーニングに満足できなかったキム監督は、“アメ”ではなくに“ムチ”を持ち出し、このタイミングでは異例の苦言を呈した。DFのカン・サンウは「監督がゆるんでいた空気を締め直した。それ以来、選手たちのなかで“安心するな”という共通認識が生まれ、それが勝利につながったと思う」と明らかにした。
メンタル面の改善に加え、浦項は戦術にも変化を加えた。戦術のキーマンとして、これまで主に守備的MFとして起用してきたイ・スンモを1列前に配置し、パロセビッチの代わりに攻撃的MFの役割を与えた。低い位置からパスを展開して攻撃を組み立てようとする蔚山に対して、パスの出どころを潰す役割をイ・スンモに与えたのだ。
この作戦の実行に至るにはある過程があった。キム監督はトレーニング中に蔚山戦に出る中盤の組み合わせを試し、10月15日には蔚山戦の先発メンバーを決めていた。この時点ではイ・スンモは先発メンバーには含まれていなかった。
しかしキム監督は、イ・スンモ抜きでトレーニングマッチを行ったときのゲーム展開が気に入らず、そこでイ・スンモの起用を決めた。キム監督は「中盤での主導権争いがカギとなる。パロセビッチだとディフェンス面が少々心許ないので、(イ・スンモを起用し)前線から積極的にプレスをかけるよう指示した」と振り返った。
キム監督の狙い通り、蔚山は浦項による前線からの強いプレスで、中盤からの突破口を見つけられなかった。キム監督は「相手の長所を消すことを意識した。中盤でのビルドアップを阻害し、サイドへと誘導することで相手は単純なクロスしか上げられず、攻撃パターンが単調になった」と指摘した。
蔚山の2トップ、ジュニオール・ネグラン(187cm)と、ビヨン・ジョンスン(196cm)はフィジカルに優れ、空中戦に強いFWだ。対してキム監督は、故障していたDFのクォン・ワンギュ(183cm)の代わりに、チョン・ミングァン(187cm)起用して高さを補強したのだが、これが奏功した。
また、後半に入り温存していたアタッカーのソン・ミンギュとパロセビッチを勝負所で投入し、追加点をもたらした。
これは蔚山選手たちのメンタルにも影響を及ぼした。DFブルトイスの不用意な後ろからのタックルや、ビヨン・ジョンスンのファールは蔚山の追われる側の焦りが如実にあらわれたプレーだといえる。
キム監督は「選手たちにも焦っているのは蔚山だと話した。要所で我々が優位に立てていたので、蔚山の選手たちを焦らせることができた」と強調した。浦項はこの試合を4-0で圧勝し、シーズン最後の“東海岸ダービー”で念願の勝利を手に入れた。
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