FCソウルが危機に直面するたび、“消防士”として登場するのが元Jリーガーのチェ・ヨンス監督(46)だ。
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5月22日に行われたKリーグ1(1部)第3節、チェ監督率いるFCソウルは浦項スティーラースに2-1で勝利を収めた。
“ラブドール事件”でクラブが批判を受ける中、チェ監督は特有のカリスマを発揮し、騒動に揺れる選手を引き締めて見せたのだ。
FCソウルは去る17日の光州FC戦でシーズン初勝利を収めた。しかし、試合結果よりも注目を集まったのは観客席の“ラブドール”だった。アダルトグッズがファンの代わりを務めたことで、FCソウルは韓国のみならず全世界からスポットライトを浴びた。
Kリーグ全体のイメージに傷をつけたFCソウルは、韓国プロサッカー連盟の賞罰委員会によって1億ウォン(日本円=約1000万円)の制裁金が課せられた。
クラブ内外で騒々しい状況に、プレーする選手たちも試合に集中することができなかっただろう。そんなとき、チェ監督は勝負師としての気質を発揮した。
チェ監督は指導者としてKリーグで第一歩を踏み出したときから、“消防士”として活躍してきた。
2011シーズン、当時のFCソウルは開幕1カ月半で16チーム中14位と著しく低迷していた。前年度にKリーグ優勝トロフィーをかかげたチームとは思えない戦いぶりだった。
そこで、首席コーチを務めていたチェ・ヨンスは監督代行に昇任すると、最終的にシーズンを3位で終えた。その功績が評価され、チェ・ヨンスは正式に監督に就任した。するとその翌年にはチームをKリーグ優勝に返り咲かせ、その指導力が韓国で広く認められるようになった。
その後、中国スーパーリーグの江蘇蘇寧からのラブコールで一時韓国を離れたチェ監督だったが、2018年に再び舞い戻った。
その当時、FCソウルは2部降格の危機に瀕していた。そこでクラブは同年10月にチェ監督を招へい。再び“消防士”役を任されたチェ監督は劇的な1部残留を達成した。昇格プレーオフで釜山アイパークを1勝1分で抑え込み、史上最大の危機に瀕したクラブを救ってみせたのだ。
今回は以前のような内部の問題ではなく、外部の要因でチームが動揺した。しかし、チェ監督は中心に立ってピンチを乗り越えて見せた。
22日の浦項戦、FCソウルは前半4分に凡ミスで失点をしてしまう。自陣後方で乱れたパス回しをかっさらわれ、そのまま得点を奪われてしまった。
試合序盤から集中できていない様子に、「(ハーフタイムに)一言も言わなかった」チェ監督は特有のカリスマで選手たちの精神を引き締めた。監督が沈黙することで、選手たち自ら集中させるよう促したのだ。結果、チームは逆転勝利を収めることができた。
試合後、チェ監督は「我々が現場でやるべきことがある。冷ややかな雰囲気をひっくり返さなければならない」と現状打破への意気込みを語った。
ジェフユナイテッド市原(現・ジェフユナイテッド市原・千葉)や京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)、ジュビロ磐田などJリーグでも活躍した現役時代、大事な決定機で必ずゴールを決めるフォワードとして「トクスリ(“鷲”を意味する韓国語)」と呼ばれたチェ・ヨンス。
監督歴10年目を迎える今シーズンも、“勝負師”としての気質を発揮できるかが注目されている。
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