2020年東京五輪の1年延期によって、各種目のベテラン選手はさらに徹底した管理が求められている。
新型コロナウイルス感染症の影響で、オリンピックが来年7月23日の開幕で延期となった。予想された当然の決定ではあるが、大会に向けて準備を進めていた選手からすれば戸惑うばかりだ。
選手生活の晩年を輝かせるために徹底した身体作りを行っていた30代中盤、後半は特にその戸惑いが大きい。目の前に控えていたオリンピックが、約1年3カ月も先延ばしとなったのだ。この先の期間を過ごすのは簡単なことではない。
スポーツは競争の世界だ。ベテラン選手は、10代や20代の若手選手との争いに勝ち抜かなければならない。代表に選ばれるまではもちろん、大会に出場すれば全世界の選手との戦いが待っている。
アスリートにとって最も重要な身体能力では、若手よりもベテラン選手の方がはるかに不利だ。年齢による身体能力の衰えは避けられない。老化に伴いタンパク質の合成も減少するため、ベテラン選手は相対的に筋肉の量と質を管理することが困難である。
いくら多くの時間を使い、トレーニングをしたとしても、若手選手のパワーやスピード、柔軟性などあらゆる面で差が生じてしまうのは致し方ない。
最も大きな問題は実戦感覚だ。
新型コロナの事態もあり、選手たちは当面の間トレーニングをまともにこなせず、試合感覚の維持も難しい。終息を待つしかない状況ではあるが、その時期がわかるはずもない。
長期の試合感覚欠如は、ベテラン選手にとって致命的だ。身体能力で勝る若手を相手に、ベテラン選手は試合感覚や熟練した経験でその差を埋める。しかし、現状ではその経験すらも失われかねない。
最近では、オリンピックを辞退するベテラン選手も出てきている。
男子ボートのイギリス代表トム・ランスリー(34)は、オリンピック延期を受けて現役引退を宣言した。彼は「東京五輪のために、私が持つすべての力を使った。2021年は私には遠すぎた」と語った。
『AFP通信』は、テニスのロジャー・フェデラー(38)やゴルフのタイガー・ウッズ(44)、陸上短距離のアリソン・フェリックス(34)など、現役30~40代選手にとって、2021年開幕のオリンピックは大きな負担になると指摘している。
サッカーU-20韓国代表の主治医を務めるチョン・テソク院長は、若手とベテラン選手の違いをこう話す。
「若手とベテラン選手の1年は同じではない。ベテラン選手の方がはるかに不利だ。フィジカル管理も重要だが、豊富な経験を取り戻すのも難しいため、容易でない状況にあるはずだ。さらなる努力を行うのと同時に、メンタル面も強化できてこそ、この1年間を持ちこたえられるだろう」
世界中のベテラン選手は、目の前に立ちはだかる試練を乗り越えることができるだろうか。
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