2020年東京五輪で本当に野球が見れるだろうか。
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は「オリンピック開幕まで4カ月残っている。6月末までにメンバー構成を完了すれば、正常開催も問題ないはずだ」と強調する。
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しかし、現状を考慮しても6月末までにメンバー構成を終えられるかは疑問符が残る。野球という競技の特性をみるべきだ。
日本は開催国枠として、韓国は昨年11月のプレミア12準優勝国として、オリンピック本選出場権を獲得した。韓国の他、イスラエルとメキシコもプレミア12を通じてオリンピック本選出場を決定している。
しかし、オリンピック本選を戦う6カ国の内、まだ2カ国が確定していない。
当初は、来る3月23日(日本時間)にアメリカ・アリゾナ州のサプライズとテンピで開催予定だったアメリカ大陸最終予選の1位国と、6月に台湾で開催予定の世界最終予選で勝ち抜いた国に出場権が与えられる想定だった。新型コロナウイルス感染症の流行がなければ、無理なくオリンピック出場する6カ国を確定できたことだろう。
だが、新型コロナが欧州とアメリカ大陸にも広く拡散され、世界保健機構(WHO)は“パンデミック”を宣言。アメリカ等は非常事態を宣言し、出入国制限の強化など非常措置を取った。
アメリカの疾病予防センター(CDC)は今後8週間、50人以上による集会の禁止を勧告したほか、ドナルド・トランプ大統領は10人以上が同じ場に集まらない方が良いとの指針を示した。
メジャーリーグは、ニューヨーク・ヤンキース傘下のマイナーリーグのチームで2人の感染者が確認されるなど、パニック状態だ。春季キャンプは全面中止となり、各練習場の閉鎖も続いている。新シーズンの開幕は5月になるとの見通しも出ているほどだ。
8週間も練習ができないのであれば、事実上ゼロから身体作りを行わなければならない。最低でも2~3週間以上の時間は必要だ。投手は最後まで投げ切るスタミナを養い、打者は打球に対する反応を鍛えるトレーニングをしなければならない。ただ何もしないまま、いきなり代表戦を出来るほど簡単なスポーツではないという意味だ。
仮に8週間後、新型コロナの事態が終息して練習が再開できたといっても、それは5月10日以降のことだ。コンディションを整え、負傷もなく試合を戦える状態になるのは6月2週目以降が妥当だろう。
一寸の狂いもなく想定通りに物事が進めば、6月末には残りの出場国を確定できるだろう。しかし、初期対応に遅れがあったアメリカの状況を考慮すると、新型コロナの事態が今後2カ月の間に終息するのは簡単ではない。
メジャーリーグ事務局は40人のロースターに含まれたマイナーリーガーのオリンピック出場を許可した。だが、シーズン開幕が遅れたことで選手の代表派遣に球団が難色を示す可能性も高い。
かといって、オリンピック出場国をすでに確定した4カ国だけに制限することもできない。
スペインオリンピック委員会のアレハンドロ・ブランコ会長は、3月18日(日本時間)に「オリンピックが今の状態のままで行われたら、とても不公平な大会となるだろう」と主張した。野球競技の残された出場枠を狙う各国野球代表チームの心情も同じだろう。
東京五輪強行の意志を示している日本とIOCは、各国の現状と新型コロナの事態を考慮し、開幕すべきかどうかを再検討すべきである。
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