彼女は2017年の本紙インタビューで、大変だった時期に自分を奮い立たせた2つのキーワードを挙げている。
カトリックの告白の祈りである「我が過ちなり」と、韓国の禅僧・法頂和尚が説く「無所有の教え」だ。
チョ・ヨジョンは「月日が経つのがとても早い。早くから演技を始めたが、ようやく成果が少しずつ出てきたと思う。最近の20代俳優を見ると、驚くし、素晴らしいと思う。キム・ウビン、キム・スヒョン、ソンジュンなどを見ると、自由という感じを受ける。私は20代で、そんな演技は考えることもできなかった」と話した。
「20代のときは、とにかくしっかりと、変化球のない正直な演技をした。自分の元の性格から抜け出すことができなかった。下手な演技とはいわれなくても、自由や魅力がある演技という言葉は聞けなかった。その時は“私も上手くなるのだろうか”、“どうすればいいのか”がずっと悩みだった。時間が経って多くの経験が積み重なってみると、視野が広くなった。30代で少し良くなったようだ」
チョ・ヨジョンの演技に変化が訪れたのは、20代半ばから後半だった2006~2008年頃だ。彼女は当時、所属事務所とのトラブルを経験し、女優活動を行えなかった。一時は演技を止めることまで考えたが、“30歳”までは続ける覚悟で空白に耐えた。
「しばらく所属事務所のトラブルで演技をする機会すらなかった。そのときほど大変だったことはない。でも、その間を休みながら演技が伸びた。2008年に『銭の戦争 オリジナル』というドラマに出たのだが、制作陣に“何かあったのか。変わった。上手い”という言葉をもらった。スランプは誰にとっても苦しいが、振り返ってみると本当に重要な時間だった。演技を続けていたらまたスランプが来るだろうが、苦労しながらもしっかりと経験にしたい」
スランプを経験した彼女を奮い立たせたキーワードが、「我が過ちなり」だ。
「所属事務所のトラブルを経験したので、自分の問題ではなく、他人のせいで仕事ができなくなったと悔やんでいた。でも悔しい思いをしたほうがいいようだ。少し経つと、受け入れることができた。聖堂でいう“我が過ちなり”が、何を意味するかを知った。ある瞬間、その言葉がしっくりきた。一緒に働く人を誤って選んだのは私だった。すべての選択をしたのは私だった。だから今は自分の選択に決して後悔しない」
チョ・ヨジョンは2013年にバラエティ番組『ジャングルの法則』に出演して、“本来、何物もない”という意味の「無所有」というキーワードを考えるようになった。
ジャングルに行ったことでシンプルな生活を目指すようになり、人間関係に対する不平・不満が生まれたときにマインドコントロールする方法にもなった。「無所有」は、複数の欲を軽減する方法でもある。
「ずっと上手くいったのではなく、中間に空白期があったことで、必死に働いたのはまだ6~7年くらいだ。実際に遅れていることも多い。そして元に戻すことができないこともある。例えば、年齢は受け入れなければならない。戻ることはできない。代わりに、今上手くできることを20代のときにしていたら、上手くできなかっただろう」
本来何もないからこそ、自分を信じようというのがチョ・ヨジョンの考え方だ。
「今まで出演してきた作品のなかで映画『韓国映画『春香秘伝 The Servant 房子伝』をきっかけに、俳優として成長できたという気がした。本当に映画をやってみたかったし、スランプ期間に諦めなくて良かったと思った。自分自身を信じようと努力する。自分が信じてあげなければ、誰が私を信じてくれるのか。演技するときも、キャラクターを信じなければ前に進むことができない」
『パラサイト』で見せた、どこか天真爛漫な美人奥様とは、また違った人生観を持っている女優チョ・ヨジョン。そんなところにも彼女の魅力があるのかもしれない。