映画がエロチック宮中史劇とジャンル分けされたことから、“エロチック史劇の女神”と呼ばれた時期もあったが、本人は至ってプロフェッショルだった。
当時のインタビュー記事では「話題作りのための露出ではなく、物語の構成上、露出やベッドシーンが必要だと感じたので演じたのみ」と語り、「“脱いだ”ということばかり焦点を合わせた偏向報道はやめてほしい」とメディアに釘を刺すほどだ。
その後はドラマと映画の両方でコンスタントに活動しながら実績を積み、2014年にソン・スンホンと共演した映画『情愛中毒』で3つの映画賞で助演女優賞を受賞している。
『パラサイト』は『情愛中毒』以来4年半ぶりの映画で、前述した青龍映画賞では主演女優賞にノミネート。チョン・ドヨン、キム・ヘスといった実力派女優たちと競り勝って、見事、生涯初の主演女優賞に輝いた。
韓国に凱旋して記者会見したポ・ジュノ監督によると、「クエンティン・タランティーノ監督も、パク社長の妻ヨンギョを演じたチョ・ヨジョンさんの演技を一日中考えたという。演技とキャラクターが印象的だったと語っていた」というのだから、チョ・ヨジョンの魅力を引きつけられたのは日本のオジサマたちだけではなさそうだ。
ちなみにまだ独身で熱愛報道が出たことはほとんどない。
2017年に主演したドラマ『完璧な妻』放映時のインタビューでは、「結婚する気はありません。寂しがり屋の性格でもなく、1人で過ごすのが好き」と明かしたこともある。
登山や現代舞踊など体を動かすのが趣味で、若い頃は共演したソン・イルグク(ドラマ『朱蒙』の主人公)の勧めでトライアスロンにも挑戦したことがあるらしい。
また、2012年かから数年間は百済(ペクチェ)芸術大学校の放送演芸科の講師も務め、後進の育成にも取り組んでいる。
その教え子の1人で若手俳優のキム・ドゴンは、本紙『スポーツソウル』とのインタビューで講師チョ・ヨジョンについてこう話している。
「演技を教えてくださるときは本当に冷徹。ただ、励ましや慰めの言葉はいつも温かい。自分の演技にもとても厳しく、撮影に臨むにあたっては自分だけの確固たる哲学が持って取り組む役者中の役者といえる方です」
いずれにしても『パラサイト』のアカデミー賞受賞によって、その顔と名前が広く知られるようになったチョ・ヨジョン。2019年12月から韓国のKBSで放映されていた主演ドラマ『99億の女』も1月で終わり、現在は新作物色段階にあるという。
次回作は多くの映画ファンの注目を集めそうだ。
(文=慎 武宏)