所属事務所や講演会場、撮影現場、テレビ局はもちろん、美容院やレストラン、自宅にいたるまで、目当ての芸能人が出没する場所で何時間も“出待ち”するのは当たり前だ。
アイドル本人だけでなく、アイドルの知人や家族の個人情報を探し出して連絡を取り、航空機の座席情報を手に入れて横の席に搭乗したりもする。さらには盗聴器や監視カメラを設置し、自宅にまで侵入するというのだから犯罪行為そのものだろう。
それにしてもサセンファンは、どんな心理でこういった過激な行為を繰り返しているのだろうか。以前、とある韓国メディアが元サセンファンという女性をインタビューしていた。
それによれば、もともとは一般的なファンだったが、「ファン同士で情報交換しているうちに目当てのアイドルが通う美容院、カフェはもちろん、宿舎の暗証番号、携帯電話の番号などもわかるようになった」という。
そこから彼女は、気付いたらサセンファンになっていた。
「知り合いのファンは自家用車で追いかけていました。アイドルの車に盗聴器も仕掛けてあったので、近づけば車内の会話も筒抜けだったとか。それを録音して、“この資料をマスコミに渡したら彼らは解散しなきゃならない”と言っていた。その情報量に驚いたし、うらやましかった」と明かした。
アイドルのすべてを知りたい近づきたいという思いが度がすぎると、異常なサセンファンに変貌させてしまうわけだが、彼ら彼女らの犯罪行為は決して許されるものではない。
こういったサセンファンからの被害をなくすために、「大部分の芸能事務所が“ブラックリスト”制度を使っている」(『朝鮮日報』)という。
アイドルの私生活を侵害したり、定められた規則を破ったりした人物はブラックリストに載せるわけだが、「その制度だけではサセンファンの根絶は難しいのが現実」だ。
というのも、芸能人や事務所がサセンファンを告訴した例は過去にほとんどない。
彼らが強硬な手段に出づらいのは、あくまでスターとファンの関係性であり、ファンのほとんどが若者だからだ。ファンに悪印象を与えかねないという思いもあるのかもしれない。
例えば2012年4月、少女時代のテヨンが公演中、舞台に乱入してきた男に連れ去られそうになる事件が起きた。警備員が男を退場させて事なきを得たが、テヨンが善処を求めたため警察沙汰になることはなかった。
耐えるしかない芸能人たちは公式の場やSNSで自制を訴えるしかできないのも、また現実といえる。
それでも前述したTWICEの所属事務所のように、警察署への要請を行う対応などが続けば、今後は現行犯逮捕されるサセンファンも出てくるかもしれない。
いずれにしても、今年はKARA出身のク・ハラや元f(x)のソルリら、K-POPアイドルが自ら命を絶つ悲劇が起きた。彼女たちはネット上の悪質コメントに苦しんでいたというが、ファンのストーカー行為に苦しむK-POPアイドルも非常に多い。
それが悲劇につながらないとも限られないだけに、一日も早い対策が必要だ。
(文=慎 武宏)