1990年代を代表するトップ女優のチェ・ジンシルが、40歳の若さで自ら命を絶ってしまったのだ。
その理由のひとつがネット上に流布されたデマや悪質コメントだったことから、国会でサイバー侮辱罪やインターネット実名制に対する立法が推進された。
ところが2012年に、憲法裁判所が違憲という判決を下した。
憲法裁は当時、「表現の自由は民主主義の根幹となる重要な憲法的価値だが、実名制はインターネット利用者の匿名表現の自由を過度に制限する」として、「実名制施行以後、名誉毀損などの不法情報が効果的に減少したという証拠もない」ことなども理由に挙げ、この制度を廃止した。
だが、もはや事態は深刻だ。実名制のような何か強力な規制がなければならないことは、火を見るよりも明らかだろう。
ある芸能界関係者は『スポーツソウル』の取材に、「実名制は現実的に効果がなくとも、議論されること自体がメッセージになりうるし、悪質コメントで他人を弄ぶ輩たちに警戒心を与えることもできる。一日も早く現実的で実効性のある制度作りを行われなければならない」と語っている。
実際に動き出しているところもある。
例えば、韓国のポータルサイト2位のDaum(ダウム)はソルリが亡くなったあとの10月25日、「ニュースと検索サービス改編計画」を発表し、芸能ニュースのコメント欄を廃止することを決定。年内中に人物検索の関連ワードサービスも廃止すると発表した。
タレントやアーティストなど芸能人たちも、悪質コメに対して直接警告している。所属事務所もデマや悪質コメを流した張本人たちを法的に訴えるなど、強硬な態度を示している。
ちなみに韓国では、デマの流布行為が情報通信網法違反(名誉毀損)と認められれば、たとえそのデマの内容に事実があったとしても3年以下の懲役または3000万ウォン(約300万円)以下の罰金に処される。
まったくのデマやウソ、フェイクである場合、7年以下の懲役または5000万ウォン(約500万円)以下の罰金に該当する刑事処罰を受けることになる。
今年7月から強化施行されている「インターネットなどの情報通信網を利用した名誉毀損」は、一般的な名誉毀損よりも加重に処罰される量刑基準も設けられた。
12月11月、5人組ガールズグループBabyVOXの元メンバーだったシム・ウンジンに悪質コメを送り付けた者が懲役5カ月刑を言い渡され、法廷拘束されている。
ただ、それでも処罰がまだ甘いという意見が多い。
とあるK-POP関係者は『スポーツソウル』の取材に対し、「悪質な書き込みは精神的なショックを与え、うつ病に近い症状にまで芸能人を追い込む。単なるいたずらと片付けられないほど度を越しており、それによる被害と波紋が大きいだけに、これからは明確な犯罪行為として責任を追及しなければならない。最近は善処なく告訴するケースが増え量刑基準も強化されたが、処罰はさらにもっと厳しく強化されなければならない」と主張している。
ただ、実名制のような法規制を強化したり、処罰のレベルを高めるだけでは解決しない。今求められているのは、書き込みや悪質なデマを作成する一部のネットユーザーの意識改善だろう。
これについては後日もう少し詳しく現状を紹介したいと思うが、いずれにしても制度的な法規制が持続的に行われ、ネットユーザー自らも悪質な書き込みを控え自己検閲できる環境作りが韓国社会に求められていることは、間違いない。
(文=慎 武宏)