幼い頃は与えられた役をやることだけで、世間にどんな影響を与えるのかは考えられなかった。いまはもう少し広い視野を持っているので、私の演技や作品そのものを通じて何を伝えられるのかと悩むようになった。特に、『新入史官ク・ヘリョン』は、“革新”を表現しようとするテーマが誇らしいと思った。世界に出ても恥ずかしくない、堂々とした貴重なテーマだと感じている。常にそうであることは難しいけど、この作品のように価値観の合う物語の中にいられると幸せだ。
―子役としてデビューした1998年から、人生の半分以上を役者として生きている。役者をしていてよかったと感じる瞬間は?
常にこの仕事をしていて良かったと感じる。“女優”として生きることでなにかを剥奪されたと思ったり、人生の中で本来の居場所を失ったと思うこともあったけど、すぐにそんな考えは消えた。今は、この仕事をしていることが大きな祝福だと感じている。大事な作品に出会うたびに、とてつもない喜びが訪れる。そんな瞬間があるからこそ、これからも楽しくやっていけそうだ。
―「居場所を失ったとき」について、詳しく知りたい。
『明日に向かってハイキック』以降、急激に愛されるようになった。当時の私は、つい最近まで高校に通っていた1人の女の子。そんな私が突然の反響についていけるはずがなく、多忙なスケジュールに引きずられるような生活を送っていた。今思うと、それもまた喜ばしいことなのだけれど、あの頃はいっぱいいっぱいだった。
事務所に自分の状態を相談すると、一度休んで落ち着く時間をくれた。そんな配慮があったからこそ、安定した今がある。私は今でも、十分な休息が何よりも大事だと感じている。事務所側も、仕事と私自身の人生のバランスを保つためにずっと気にかけてくれる。おかげさまでスランプを感じたことがない。
―これからのビジョンはどんなものか。
振り返ってみると、20代は特に一生懸命に仕事をした。芸歴は長いけれど、10代を振り返るとそれほど仕事に尽力していたわけではなかった。学生のうちにしかできないこと、感じられないことをちゃんと楽しむことができたと思う。その頃の自分が今の自分の8割を作っていると感じるし、おかげで女優としてでなく1人の人間としての人生を歩んでいると実感している。これからも、自分なりのバランスをキープし続けたい。(了)