【韓国時代劇のツボ】韓国時代劇にはなぜ“女性主人公”が多いのか

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朝鮮王朝の歴史を見ると、儒教が国教として国土の隅々まで浸透していた。

儒教には男尊女卑の思想がある。それだけ女性は厳しい立場に置かれたのだが、実は朝鮮王朝時代には、王族女性が最高権力者になることができる政治体制が保たれていた。その史実が、現代の時代劇の制作に好都合だったのである。

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実際、朝鮮王朝では未成年のままで即位する王が意外と多かった。

この場合、王族女性の最長老(王の母か祖母)が、王が成人するまでに垂簾聴政(すいれんちょうせい)を行うのが習わしだった。

垂簾聴政とは摂政のことで、幼い王の背後に御簾(みす)を置き、その奥にいた王族女性の最長老が重要な政策を最終的に決定するのである。

最初に垂簾聴政をしたのは、7代王・世祖(セジョ)の正室だった貞熹(チョンヒ)王后。彼女はドラマ『王女の男』でも最後まで目が離せないほど重要な役割を担っていた。

この貞熹王后の後にも垂簾聴政をした女性が多いが、そんなときに限って独裁的な政治が横行して世が大いに乱れている。

たとえば、俗に「朝鮮王朝3大悪女」という呼び方がある。

10代王・燕山君(ヨンサングン)をそそのかして暴政の片棒をかついだ側室の張緑水(チャン・ノクス)、宮中の女官として悪行を重ねた鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)、一介の女官から王妃まで上り詰めたが最後は死罪になった張禧嬪(チャン・ヒビン)…この3人が一応は悪女の典型になっているが、彼女たちの悪はまだ小粒で、私利私欲にまみれただけだ。

実は、朝鮮王朝には、多くの民衆を不幸のどん底に突き落とした「ウラの3大悪女」がいる。

それは、義理の息子の12代王・仁宗(インジョン)を毒殺した疑いが濃い文定(ムンジョン)王后、ドラマ『イ・サン』の主人公になった22代王・正祖(チョンジョ)を毒殺した可能性がある貞純(チョンスン)王后、23代王・純祖(スンジョ)の正室で外戚政治の権化となった純元(スヌォン)王后の3人だ。

彼女たちこそが巨悪の元締めなのだが、それが可能だったのも垂簾聴政によって女帝のようにふるまうことができたからである。

一方、王に取り入って陰謀をめぐらす側室がいたし、人を陥れて自らの出世を果たした女官もいた。

このように、宮中には事件を起こす女性たちがあまりに多かったが、彼女たちは歴史の中に封じこめられているわけではなく、むしろ、韓国時代劇の重要人物として現代に甦ってくる場合が多い。

実際、朝鮮王朝を舞台にしたドラマのほとんどは女性が主人公になっている。

張禧嬪の場合は、「企画に困ったら張禧嬪を出せ」と言われるくらいに何度でも時代劇に登場する貴重なキャラクターだ。

(写真提供=MBC)チャングムも実在の人物だが…

チャングム(長今)も同様で、彼女は『朝鮮王朝実録』に10カ所ほどの記述がある医女である。そういう女性を全54話もある時代劇の主人公にして奔放に描くところに韓国時代劇の真骨頂がある。

朝鮮王朝時代に実在した女性を現代的な視点で魅力たっぷりに描く。それもまた韓国時代劇が面白い理由になっている。

(文=康 熙奉/カン・ヒボン)

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