先週8月4日の23時からNHK総合で放送されている韓国時代劇『不滅の恋人』。
昨年の『オクニョ 運命の女(ひと)』以来となるNHK総合で放送される韓国時代劇だけに、期待している人も少なくないだろう。
そもそも『不滅の恋人』は、韓国では『大君(テグン)、愛を描く』というタイトルで、2018年3月3日~5月6日に放送された。
「TV朝鮮」というケーブルチャンネルでの放送にもかかわらず、最高視聴率は5.6%(ニールセンコリア)を記録。当時、TV朝鮮の最高記録となる視聴率を最終回に叩き出している。なぜ同作は話題になったのだろうか。
まずキャストが豪華だ。
ヒロイン(ソン・ジャヒョン)を演じるのは、韓国時代劇ファンにはお馴染みのチン・セヨン。もともと映画やドラマで活躍していたが、前出の『オクニョ』でブレイクした女優だ。
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そんなヒロインをめぐって、2人の大君(=王子)が対立する。兄イ・ガンを演じるのはチュ・サンウク、弟イ・フィに扮するのはユン・シユンだ。
特にユン・シユンは、端正な顔立ちと爽やかな魅力で人気が高い。彼が主人公を演じたドラマ『製パン王キム・タック』は、韓国で最高視聴率49.3%となる驚異的なヒット作となった。
キャストを支える制作スタッフも負けていない。
『不滅の恋人』の監督は、時代劇ファンの間で評価の高い『王女の男』を演出したキム・ジョンミン。専門家から「オペラのような音楽を使って場面を盛り上げるのが本当にうまい」と評価されている。また脚本家は『イニョプの道』で知られるチョ・ヒョンギョンだ。
こうして並べてみると韓国でヒットしたことも納得だろう。だが、『不滅の恋人』がさらに興味深いのは、そのモデルとなっている“史実”ではないだろうか。
舞台は15世紀の朝鮮王朝。『不滅の恋人』は実在した首陽(スヤン)大君と、その弟・安平(アンピョン)大君の対立がモデルとなっている。
史実において、首陽大君は朝鮮王朝第4代王・世宗(セジョン)の次男、安平大君は世宗の三男だ。2人の兄、つまり世宗の長男である文宗(ムンジョン)が第5代王となっており、劇中も同じ設定となっている。
首陽大君は、後に第7代王・世祖(セジョ)となるのだが、彼は猛烈なる野心で王位を奪った人物だったとされている。なんせクーデターを起して、兄・文宗の長男、つまり甥である第6代王・端宗(タンジョン)から王位を強奪したのだ。
豪腕な野心家だったわけだが、在位期間で王権を強化したという評価も受けている。
一方で、作中ユン・シユンが演じる弟・安平大君は、タイプがまったく違う。
学問と芸術で優れた才能を持っており、端宗を支えようとしたが、自分よりもはるかに大きな政治的野心を持っていた兄・首陽大君によって犠牲となる不運の王子だ。
そもそも首陽大君によるクーデターの名分は、安平大君が大臣らと結託して端宗の王位を略奪しようと企てていたため、それを防ぐために起したというものだった。そのためクーデターから8日後に、安平大君は賜死(しし)に追い込まれている。
そんな骨肉の争いを起した2人の王子が『不滅の恋人』では、どのように描かれるか。そんなところにも注目してみたい。
(文=慎 武宏)
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