カンヌを沸かせた俳優ソン・ガンホ、ずっと守ってきたという「営業秘密」とは?【インタビュー】

2019年06月11日 話題 #韓国映画
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俳優ソン・ガンホが、珍しく声を弾ませた。映画の中ではお馴染みだが、普段はあまり見せることのないその様子から、機嫌の良さが如実に伝わる。

ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト』が第72回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した際、主演を務めた俳優ソン・ガンホは一緒にトロフィーを持ち上げた。

カンヌのレッドカーペットを歩くだけでも映画俳優としては稀な光栄のはずだが、ソン・ガンホは3度目のカンヌでそれこそ“最高の瞬間”を味わっている。男優主演賞の有力な候補としても挙がっていたが、パルムドールとの二重受賞は難しいため不発に終わった、という噂も授賞式のアフターパーティーで行われていたという。

そのことをソン・ガンホに聞くと、「この映画を男優主演賞のカテゴリーに納めるのは勿体なさすぎる。パルムドールに全て(の評価)が入っているので、全く惜しいとは思わない」と、真面目に語った。

(写真提供=CJエンターテインメント)

「作品は運命のように出会うもの。そう、“運命”と表現したい。今まで出演した作品全てに愛着を感じるし、意味があった。作品を通じて結んだ全ての縁が大切だ」というソン・ガンホ。

これまで『弁護人』『王の運命-歴史を変えた八日間-』『密偵』『タクシー運転手 約束は海を越えて』『麻薬王』など、時代・社会的メッセージ性の強い映画が多かったが、今回の『パラサイト』はとりわけ貧富の差、人間の尊厳など様々なメッセージが込められており、これまでの映画とはまた一味違う雰囲気を漂わせる。ソン・ガンホも『パラサイト』の撮影をこう振り返った。

(写真提供=CJエンターテインメント)映画『パラサイト』より

「“気楽に演じるのは久しぶり”とポン監督に話したことがある。いい俳優たちと一緒に演技するという意味もあったが、ポン・ジュノという大きな山が影を作ってくれたのでとても気楽だった。今までは自分ひとりで責任というか、重荷を背負っている感じがあったのも事実だ。ところがある日、ポン監督からこんなメールが届いた。“今まで一人で背負ってきた重荷を、今度は僕が分け合います”と。このメールを見て涙がこみ上げた」

そんな重圧感の中、作品ごとに新しい演技を披露し、観客を驚かせる秘訣は何か。

(関連記事:韓国俳優ソン・ガンホが語る演技の秘訣は、“真似より本質”【インタビュー①】

「それは営業秘密」とジョークを飛ばして笑ったソン・ガンホは、たちまちその“営業秘密”である演技論を語ってくれた。

「カメレオンのようにどれだけ幅広い姿を披露できるかが良い演技の基準とは思わない。それは観客が感じるべきものだ。僕が考える一番良い演技は、任されたキャラクターにどう尽くすかだ。それだけはずっと心がけ、守ってきたと思う。演技を通じて新しい何かを見せようとしたことはない。自分がどんな方法で尽くすかが最も大事な部分ではないか」

(写真提供=CJエンターテインメント)映画『パラサイト』より

今回の映画『パラサイト』でお気に入りのシーンについては、こう説明する。

「事件が起きる直前、インディアンの姿をしてパク社長と話し合うシーンだ。ギテク(ソン・ガンホ)の顔に複雑な心境が現れる。怒りでもなく、自己悲観でもない、言葉にはできない表情だ。映画を見ながら自分でもどう演じたのか驚いたくらい」

ポン・ジュノ監督とは長年の付き合いと知られる。『パラサイト』のパルムドール受賞後は、二人のエピソードが改めてSNSに広まった。ソン・ガンホはポン監督との出会いをこう振り返る。

「初めて会った時も、コーヒーを飲みながら楽しく話した。その時、この人はきっとビッグになるだろうという予感がした。礼儀正しく、真面目さが伝わった」

最近の日常を尋ねると、「あまりに大きな喜び(パルムドール受賞)があって、ささやかな日常を楽しむ余裕がない」というソン・ガンホ。ただ、7月にはまたも主演映画『The King's Letters』(原題)の公開を控えているため、多忙は続きそうだ。

ただ、その後の仕事については「まだ決まっていない」という。

「僕は多作俳優になりたいが、それができていない。今回はたまたま主演映画2本が立て続けに公開されるが、実は年に1本しか撮っていない。現場での撮影終了後に、他の俳優がこれから違う現場に向かうと言うのを聞くと、羨ましくて僕もああなりたいと思う」

年に1本とはいえ、主演映画が立て続けに繁忙期に公開されるのは、それだけソン・ガンホの存在感が大きいということだ。彼の新しい“運命”となる次回作も、きっと大勢の観客を呼び寄せることだろう。

新しい作品と出会ったソン・ガンホはまたどんな声で自分を語るか、今から楽しみだ。

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