K-POP業界ならではの特別なシステムと言えば、「練習生制度」が挙げられる。
オーディション番組『PRODUCE』シリーズや、日本でヒットした『Nizi Project』を見ても分かるように、韓国の芸能事務所のほとんどはデビュー予備軍である「練習生」を抱えており、その中から選りすぐりの人材をデビューさせるシステムで運営されている。
練習生たちは歌手になるための専門的なトレーニングを受けるが、これがなかなか厳しい。プロによるボーカルとダンスレッスンは基本中の基本で、事務所によっては英語や日本語、中国語のような外国語や、楽器の演奏、作詞・作曲、メンタルコントロール、業界のマナーなどの勉強を同時並行で進めるところもある。
これらのトレーニングを学校に通いながら受けるとなれば、毎日がハードなスケジュールなのは言うまでもない。それに加え、デビューするまで幾度となく繰り返すテストの数々が、練習生たちにさらなる試練を課す。
JYPエンターテインメントやSMエンターテインメントなど大手事務所の場合、月ごとに「月末評価」を行うと知られている。この月末評価で実力が伸びていなければ事務所を追い出される。月末評価だけでなく、毎週もしくは抜き打ち評価、特別評価などで気の緩みを許さない事務所もあると聞く。
テストはもちろん、仲間との競争、学業との両立、将来への不安などと日々戦っている練習生たち。彼らのトレーニングの期間は一般的に1~3年と言われているが、中にはそれ以上の長い期間を経てようやくデビューに至るケースも少なくない。
その代表的な女性アイドルの1人が、TWICEのジヒョだ。
TWICEのメインボーカルを務めるジヒョは、2005年7月から2015年10月まで、約10年以上をJYPエンターテインメントの練習生として過ごした。彼女がデビューしたのは18歳の時であるため、人生の半分以上を歌手になるために捧げたことになる。
ジヒョは以前、JTBCバラエティ番組『集まってこそ旅立てる』(原題)に出演して「今思えば、学生時代の思い出がないことがすごく残念です」と、練習生時代を振り返っていた。放課後にクラスの友だちと遊びに行くような平凡な生活を諦め、ひたすら練習に打ち込んでいたのだろう。
一般的には最年長者がリーダーを務めるグループが多いなか、TWICEの中間層であるジヒョがリーダーになったのも、「メンバーの中で最もトレーニング期間が長いため」と言われている。同年代との付き合い方や大人とのコミュニケーションの取り方、メンタルの強さなど、10年以上の練習生生活の中で自然と身に付けた彼女のリーダーシップが評価されたのだ。日韓で活躍するTWICEの抜群のチームワークには、ジヒョが貢献した部分も少なくないはずだ。
宇宙少女(WJSN)のソラも、ジヒョと同じく約10年間の練習生時代を送った。
ソラは「日々あらゆる面で私はますます良くなりつつある」(エミール・クーエ)など、名言を心の中で唱えながら先の見えない練習生生活を耐え、21歳だった2016年にようやくデビューを果たした。
宇宙少女では訴えかける歌唱力でリードボーカルを務めている。バラエティ番組に出演すればメンバーたちをまとめるなど、リーダーシップを発揮する場面も多い。ソラの活動はファンの間で「練習生10年の貫禄を感じる」と大絶賛だ。
ジヒョとソラには及ばないが、Red Velvetのスルギも練習生時代が長いことで有名だ。
練習生としてSMエンターテインメントに入社したのは中学1年生の2007年。それから7年間、数多くの練習生仲間が辞めたり、デビューしたりする様子を見守りながら黙々と練習に取り組んでいたそうだ。
スルギは以前、音楽番組『ユ・ヒヨルのスケッチブック』(KBS)でデビュー前をこう振り返っている。「同期たちが先にデビューすることより、次々と練習生を辞めていくのが最も辛かったです」。
先にデビューしたf(x)の故ソルリ、クリスタルが「歌も上手だし、クマちゃんのように可愛い練習生がいる」とテレビ番組でスルギについて言及し、デビュー前から検索ワードランキングの上位を占めたこともあった。
同社のルーキー紹介プロジェクト「SM Rookies」の1人に選ばれるなどし、20歳でようやくデビューを飾ったスルギ。もともとボーカル志望だったが、声帯の負傷によって歌の代わりにダンスに打ち込んだ結果、メインダンサーを任されるほどになった。その誠実な努力と我慢強さはデビュー後にも生かされ、どんな難しい振り付けやコンセプトも完璧にこなすRed Velvetの中心メンバーとなった。
ほかにもBLACKPINKジェニー(6年)、Red Velvetアイリーン(5年)などが、長い練習生生活の末、ようやく日の目を見た。
世界を魅了するガールズグループの誕生は、徹底したシステムのなかで行われている。今この瞬間にも、多くの練習生たちがデビューを目指して精を出しているはずだ。
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