ドラマ『愛の不時着』から『夕食一緒にしましょうか?』まで。2作のドラマに立て続けに出演した女優ソ・ジヘ(35)は、「名残惜しいというより、すっきりしている」と言って笑う。
ソ・ジヘを演技に邁進させた原動力は、幅広い演技に対する渇きだった。
最近終了したドラマ『夕食一緒にしましょうか?』では、“B級感受性”に満ちたプロデューサー、ウ・ドヒ役を務め、『愛の不時着』で演じた気位の高いソ・ダン役とは真逆の魅力を発散している。
クールで知的なイメージが強かったゆえ、「冷たい都会の女」を任されてきた。いつも似たようなキャラクターを演じることに対して悩みも多かったという。
『愛の不時着』が終わってから休まずに『夕食一緒にしましょうか?』に出演した理由も、そこにある。
「常に明るくてライトな感じの演技がしたかったが、都会的なイメージが強くてオファーが入ってこなかった。今回のドラマはメイクもほとんどせず、鏡も見ないで臨んだ。まず自分がナチュラルにならないと、キャラクターに成りきれない気がして。この作品を通じて自らの限界を乗り越え、これまで溜まっていた渇きも解消できたみたで嬉しい」
『愛の不時着』が終了してから2週間後に『夕食一緒にしましょうか?』のクランクインだったため、人知れぬ苦労もあったという。
「ソ・ダンのキャラクターが強くて、北朝鮮のなまりを使っていたのでその喋り方が残っていた。ウ・ドヒは軽いセリフを放つ子なのに、『これってソ・ダンじゃない?』と思うほどで。初めの頃はソ・ダンの面影を消そうと頑張った。だから初めて前髪も切ってみたのだが、まだぎこちない」
『夕食一緒にしましょうか?』では、相手役のソン・スンホンに向けた愛嬌演技が多かった。
「愛嬌のあるタイプではない。辛かった(笑)。でも第2話での悪口と共に体がほぐれはじめた(笑)。実は、イケメンという意味のフランス語だったが、悪口を上品にかます感じだった。その後がアドリブも、アイデアもたくさん浮かび上がった」
落ち着いたソ・ダンと、明るいウ・ドヒ。どっちのキャラクターが近いかと聞くと、「演技というのは、自分の中に潜んである姿を増幅させて表現するものだと思う」とし、「たまには冷たくてしっかりしている時もあるが、ドヒのように気を抜くソ・ジヘもいる。自分の中にあるものを引き出そうと頑張った」と話す。
そして「突拍子もないほうだ。友だちからは、世間がお前の本当の顔をもっと知るべきだとよく言われる。明るくてアクティブだし、人の目をあまり気にしないタイプだ」と語った。
tvN史上最高視聴率を更新した『愛の不時着』は、放送終了から5カ月が経った今も、海外で熱い人気を博している。ソ・ジヘも、海外からの関心の高さを実感しているそうだ。
「私のSNSに各国のファンの方がコメントを寄せ、DMを送ってくださって、『愛の不時着』の人気を実感している。5カ月が経つのにまだソ・ダンについて話してくださる。おかげで韓国ドラマの威力を感じたし、もっと上手くやりたいという使命感も大きくなった」
それなら、ソ・ジヘにとって『愛の不時着』はどういう意味を持つか。
一言で言えば「考えただけで心温まるドラマ」と定義する彼女は、「大変だったけど、楽しかった。ソ・ダンのキャラクターは私に多くを与えてくれた。演技の幅を広げられた、挑戦しがいのあるキャラだった。今後、違う“はまり役”もあるかもしれないが、たくさん愛されたキャラなので感謝している」と話した。
『夕食一緒にしましょうか?』第1話では、『愛の不時着』で結ばれなかった俳優キム・ジョンヒョンがカメオ出演している。これは、ソ・ジヘ自ら彼に出演をお願いしたものだった。
快く出演してくれたというキム・ジョンヒョンに対し、ソ・ジヘは「ご飯をおごることにした。また、ジョンヒョン君がドラマ出演すれば、私もカメオ出演してあげると約束した」と言って笑った。
そして「『愛の不時着』では悲しいエンディングだったので、お互い気が合った。撮影の時は本当にイケ好かなくて『ク・スンジュンの裏切るもの!』と話したこともある。視聴者からも面白いコメントがたくさん寄せられていた。私たちカップルの結末に物足りなさを感じるファンにとっては、(彼のカメオ出演が)イベントのように感じてくださったと思う」と振り返った。
ソ・ジヘにとって、『愛の不時着』で最も記憶に残るのはク・スンジュン(演者キム・ジョンヒョン)とのキスシーンという。
「これまで意外とキスシーンがなかったので、『愛の不時着』以降にメールがたくさん届いた。みんな“ついにキスしたんだね、おめでとう!”って(笑)。母も“やっと男に愛されたのね”という反応で、周囲の反応がすごく面白かった」
ドラマ出演で多忙を極めていたソ・ジヘは、しばらく休みを満喫しながら次作を決める予定だ。
「20代には情熱と勢いでがむしゃらに走ってきた。30代に入っては演技とは何か、どうすべきか深く考えるようになり、欲も出る。まだまだ未熟な部分が多いが、ちょっとずつ成長していきたい」
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