『愛の不時着』や『梨泰院クラス』など、韓国ドラマ関連のニュースが増えている今日頃だ。“第4次韓流ブーム”が起きているともいわれている。
『愛の不時着』も『梨泰院クラス』も現在はNetflixでしか視聴できないが、現在、地上波や衛星チャンネル、ローカル局などでも数多くの韓国ドラマが放映されている。
地上波で放映中の韓国ドラマで最近の注目作といえば、『100日の郎君様』だろう。
俳優としてはド・ギョンスの芸名で活動しているK-POP人気グループEXOのD.O.(ディオ)が、初めて挑戦した時代劇で、5月17日からNHKの総合テレビで毎週日曜日23時から放送されている。
個人的に注目したいのは、NHKの海外ドラマ枠で数多くの韓国時代劇が放映されてきたということだ。
『冬のソナタ』『美しき日々』『オールイン』など、いわゆる第1次韓流ブームの火付け役となった作品たちも、NHKの海外ドラマ枠で放映されたが、実はその中でも韓国時代劇ドラマが非常に多いのだ。
振り返れば、その最初は2005年にNHK総合テレビで放映された『宮廷女官チャングムの誓い』だった。当時は土曜深夜の放送にも関わらず、平均10%以上の高視聴率をマークしたらしい。『チャングム』はその後も他局やローカル放送局で何度も再放送され、今でも人気が高い。
チャングムを演じたイ・ヨンエは今でも人気で、何かとニュースになるほどだ。
その『チャングム』以降、『朱蒙』『善徳女王』など民放テレビ局でもこぞって韓国時代劇が放映されるようになったが、定期的に韓国時代劇を取り扱っているのはNHKだ。
ざっと並べてみると、その多さがわかる。
2005年『宮廷女官チャングムの誓い』(全54話)
2005年『チェオクの剣』(全14話)
2008年『太王四神記』(全24話)
2008年『ファン・ジニ』(全25話)
2009年『イ・サン』(全77話)
2011年『トンイ』(全60話)
2012年『王女の男』(全24話)
2013年『太陽を抱く月』(全20話)
2013年『馬医』(全50話)
2014年『奇皇后~ふたつの愛 涙の誓い~』(全51話)
2017年『オクニョ 運命の女(ひと)』(全51話)
2018年『仮面の王 イ・ソン』(全20話)
2018年『秘密の扉』(全24話)
2019年『不滅の恋人』(全20話)
2019年『ヘチ 王座への道』(全24話)
2020年 『100日の郎君様』(全16話)
BSプレミアで放映されたあと地上波進出したものあれば、BSプレミアでだけ放映されたものもあるが、ざっと並べてみると、こんなにも多い。
ただ、それだけ韓国時代劇ドラマが人気があるということでもあるのだろう。韓国時代劇がひとつのジャンルとして定着し、たしかなファン層を獲得しているのは間違いなさそうだ。
そんなNHK放映の韓流時代劇で現在放映されている『100日の郎君様』は、これまでの放映作品とは毛色が異なる。
これまでは実在した人物や歴史的事件をモチーフやヒントにした時代劇の王道作が多かったが、『100日の郎君作』は完全なるフィクション。それもジャンルとしてはロマンティックコメディの要素が多分に盛り込まれている。
何しろド・ギョンス演じる主人公の世子イ・ユルからして架空の人物で、そのユルがとある陰謀によって記憶喪失となり、ウォンドクという名の庶民に転落。同じくワケあり庶民のホンシムと結婚し、コミカルな夫婦劇を繰り広げていくのだ。
時代設定こそ朝鮮王朝だが、韓国でもジャンルとしてはラブコメ時代劇に分類された。
だが『100日の郎君様』は、単なるラブコメ時代劇ではない。回を重ねるにつれて深まっていくウォンドクとホンシムの関係は微笑ましく、その一方でウォンドクが本来のイ・ユルの記憶を取り戻していく。
その過程で宮中内にうごめく権力争いと陰謀なども絡みながら物語は急展開を見せるのだ。サスペンスの要素もあって観る者を飽きさせない。
近年はラブコメ要素も含んだ『雲が描いた月明り』やK-POPアイドルたちが多数出演する『花郎<ファラン>』『麗<レイ>』など、第3次K-POPブームに熱狂する10~20代の女性たちの間でも韓国時代劇は人気だと聞くが、『100日の郎君様』もそんな若者層にも支持されそうな作品であることは間違いないだろう。
ちなみにこの『100日の郎君様』も、先日紹介したスタジオドラゴン制作の作品だ。『愛の不時着』や『ザ・キング:永遠の君主』などスタジオドラゴン作品はNetflixでも人気だが、地上波では同社制作の『100日の郎君様』が韓流時代劇の新たなファン層の獲得につながるか。
いずれにしても“第4次韓流ブーム”は、たしかに起きつつあるようだ。
(文=慎 武宏)
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