Netflixを通じて爆発的な人気を博している韓国ドラマ『愛の不時着』。パラグライダー事故で北朝鮮に不時着した財閥令嬢ユン・セリと、彼女を隠して守るうちに恋に落ちる北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョクの極秘ロマンスだ。
【写真】『愛の不時着』ヒョンビン♡ソン・イェジンの胸キュンシーンBEST3
話題が話題を呼び、今やアジア全域を賑わせている同作だが、中でも注目を集めたのは北朝鮮の将校を演じたヒョンビンだろう。“北朝鮮のエリート将校”という未知の存在を演じるだけに、韓国では放送前からスター俳優ヒョンビンへの期待が大きかった。
いざ放送がスタートすると、ヒョンビンはハンサムなルックスだけでなく能力も優れているリ・ジョンヒョクの姿を見事に表現し、底知れぬ魅力を見せつけた。
実は、ヒョンビンが北朝鮮の人物を演じるのは『愛の不時着』が初めてではない。2017年に韓国で公開された主演映画『コンフィデンシャル/共助』では、北朝鮮の刑事イム・チョルリョンを見事に演じ大きな反響を得た。
当時ヒョンビンは、役作りについてこう話している。
「『コンフィデンシャル/共助』への出演が決まってから、スタッフには真っ先に“北朝鮮語の先生に早くお会いしたい”とお願いしました。撮影がスタートする3カ月前からお会いして、何度も慎重に確認をしてもらいながら、完璧に感情をあらわせるように(北朝鮮のなまりを)練習しました」
並みならぬ熱意と努力でイム・チョルリョンのキャラクターを自分のものにしたヒョンビンだが、北朝鮮の人物を演じるのが2度目だからといって『愛の不時着』で手を抜くことは一切なかった。それどころか、前作以上の情熱と工夫で演技に臨み、実際に仕上がったリ・ジョンヒョクという人物は、ファンの間で「ヒョンビンだからこれほど魅力的だった」とされるほど大きな反響を得た。
実際にヒョンビンはリ・ジョンヒョクを演じるにあたって、「『コンフィデンシャル/共助』で経験があったため多少の慣れはあったが、それでも難しかった。メインの舞台が北朝鮮だったため、現地のイントネーションを自然にこなすことがより重要だった」と語っている。
それだけでなく、“エリート将校”の肩書きに恥じぬよう、身体づくりにも励んだという。強靭な肉体を連想させるためトレーニングに励み、日焼けをしてから撮影に臨んでいた。
こうして出来上がったリ・ジョンヒョクというキャラクターを語るうえで外せないのが、並外れたピアノの実力だろう。エリート将校が優美で繊細なピアノのメロディーを奏でる姿は魅力的なギャップを作り出し、多くの視聴者の心を掴んで離さなかった。
さらに言えば、リ・ジョンヒョクのピアノ演奏はヒロインであるユン・セリ(ソン・イェジン)との運命を物語る重要な伏線でもある。そのため、ピアノが絡んだシーンを『愛の不時着』の名場面に挙げるファンも少なくない。
『愛の不時着』と同様にヒョンビンのピアノ演奏シーンが注目されたのが、2005年に韓国で放送されたドラマ『私の名前はキム・サムスン』だ。
韓国で最終回の視聴率50%超えを記録したこのドラマで、ヒョンビンはエリートでイケメンだが性格に難ありなレストラン社長、ヒョン・ジノンを熱演。放送時にはピアノ演奏を披露するシーンでヒョンビンが実際に弾いていることが明らかになり、話題を呼んだ。
ヒョンビンは、ヒョン・ジノン役に抜擢されてから3カ月間にわたってピアノの練習を重ねたという。『私の名前はキム・サムスン』の制作発表会を通じて、「小さい頃にピアノを習っていましたが、大人になってやろうとしても上手くいきませんね。家にピアノを1台購入して、必死で練習しました」と語っている。
また、「ヒロインであるサムスン役のキム・ソナさんはピアノを専攻していたので、目の前で弾くのがとても恥ずかしかったです」と微笑ましいエピソードも話した。
3カ月にわたる猛練習で見事な演奏を披露したヒョンビンだが、制作発表会で「最も大変だったシーン」を問われた際には“オールヌードのシャワーシーン”を挙げてファンを驚かせた。
ヒョンビンは当時、「監督がシャワーシーンを上からのアングルを撮りたいと言って、下着がカメラに映りそうだというのでそれさえ脱いで撮影に臨みました」と語っている。
実際に行われた撮影には必要最低限の男性スタッフのみが参加したというが、ヒョンビンはその後のインタビューを通じて「あのシーンはいつ思い出しても恥ずかしい」と振り返っている。
常に体当たりの演技で作品ごとに新たな魅力を届けてきたヒョンビンだが、その中で「ヒョンビンの新境地」と呼ばれるまでに反響を呼んだのが、ソン・イェジンと初共演を果たした映画『ザ・ネゴシエーション』だ。
凶悪犯と警察による画面越しの交渉を描いた心理サスペンス『ザ・ネゴシエーション』で、ヒョンビンは目的不明の凶悪犯ミン・テグ役に抜擢。前述の『私の名前はキム・サムスン』やドラマ『シークレットガーデン』を通じてラブコメ界で大きな人気を獲得しただけに、ファンからすれば“凶悪犯”という役柄はとても想像できないものであったに違いない。
しかし、いざ映画が公開されると、ヒョンビンはミン・テグ役を通じて残忍な人質ショーを繰り広げ、交渉人に指名された警部補ハ・チェユン(ソン・イェジン)との手に汗握る心理戦で観客の心を揺さぶった。
初の悪役であるだけに、ヒョンビンの役に対する思いも格別だった。
ヒョンビンはミン・テグを演じるにあたって、「悪役を意識したというわけではなく、ミン・テグという1人のキャラクターが持つ複雑な感情を表現することに集中した」と話している。 “悪役の典型”から脱することを心掛け、表現方法の研究にかなりの時間を費やしたそうだ。
実際に『ザ・ネゴシエーション』では、通常なら激高するようなシーンで物静かな佇まいを見せるなど、余裕の感じられる素振りで凶悪犯の不気味さを見事に描き出している。こういった既存の演技にとらわれない表現力も、ヒョンビンならではのものに違いない。
その後『愛の不時着』で演じたリ・ジョンヒョクもまた、“1人の人間が持つ複雑な感情”が印象的なキャラクターだ。妥協しない原則主儀の一方で、内面に純粋さや温かさを秘めたリ・ジョンヒョクの感情的な演技には、『ザ・ネゴシエーション』で培ったヒョンビンの成熟した表現力が生きている。
まさに『愛の不時着』は、俳優ヒョンビンが積み重ねてきたキャリアの集大成といえるだろう。
作品ごとに、熱心な役作りで新たな魅力を更新し続ける。そんなヒョンビンが主演を務めたのだから、『愛の不時着』のヒットは約束されたものだったのかもしれない。
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