『愛の不時着』、韓国放送当時の視聴率が物語っていた“大ヒットの必然性”とは

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現在、ネットフリックスで圧倒的な人気を誇っている韓国ドラマ『愛の不時着』。日本では常に人気ランキングに入るほど大ヒットを記録しているが、韓国放送当時は決して初回から爆発的な反響を呼んだドラマではなかったことをご存じだろうか。

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『愛の不時着』の第1話が韓国で放送されたのは、2019年12月14日。ニールセンコリアの有料プラットホーム世帯視聴率基準で見ると、第1話の平均視聴率は6.1%だった。決して最高のスタートではなかったのだ。

ただ視聴率は回を重ねるごとに右肩上がりに伸びていき、最終回(第16話)では平均視聴率21.7%という歴代tvNドラマとしての最高記録を達成する。

(写真提供=tvN)『愛の不時着』

視聴率を跳ね上げるきっかけは、第何話で、どんなシーンだったのだろうか。視聴率の推移とともに、大ヒットの必然性を探ってみたい。

放送を重ねるごとに視聴率がアップ

『愛の不時着』は第1話で平均視聴率6.1%と無難なスタートを切ると、第2話(2019年12月15日放送)6.8%、第3話(同12月21日放送)7.4%、第4話(同12月22日放送)8.5%と、放送を重ねるごとにファンを増やしていった。

特に2019年12月28日に放送された第5話は、『愛の不時着』の視聴率を語るうえで外せない。平均視聴率8.7%、最高視聴率10.3%を記録し、初めて二桁を達成した回だからだ。そして第5話は、地上波を含めた全チャンネルを通して同時間帯視聴率1位を記録したことでも注目される。

(画像=tvN)『愛の不時着』第5話

たしかに第5話は、リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)とユン・セリ(ソン・イェジン)、そしてソ・ダン(ソ・ジヘ)とク・スンジュン(キム・ジョンヒョン)の複雑にもつれた関係が展開され、目が離せなくなった。

放送後、韓国の視聴者たちは「リ・ジョンヒョクの最後の表情のせいで今夜は眠れない」「今日もやっぱりエンディングが最高」「セリが無事に家に帰ることができたらという思いと、帰らないでほしいという思いが共存する」「ク・スンジュンとユン・セリが知り合い?」など、先が読めない展開に大きな反応を示していた。

続く第6話でも平均9.2%を記録し、いよいよ『愛の不時着』の快進撃が始まる。

40代女性の心を鷲掴みに!

年が明けた2020年1月11日に放送された第7話では、平均視聴率9.4%、最高視聴率11.2%を記録。自己最高視聴率を更新し、地上波を含めた全チャンネルの同時間帯視聴率でも1位となった。

(画像=tvN)『愛の不時着』第7話

第7話でリ・ジョンヒョクは、ユン・セリに対する自分の感情をはっきりと自覚した。空港に向かう道でトラック部隊に包囲されたユン・セリを救うために駆け付けたリ・ジョンヒョクは、激しい銃撃戦で肩を負傷して意識を失う。ユン・セリは飛行機の時間が迫っているにもかかわらず、荒っぽい運転で病院に向かい、視聴者たちは手に汗を握った。そんな2人の互いを思う行動は、2人の思いがすでに抑えきれなくなったことを推測させる。

そしてユン・セリに口づけをするリ・ジョンヒョクの姿は、視聴者の心拍数を高め、“極秘ロマンス”がピークを迎えたことを知らせるが、2人は“現実の壁”にぶつかることになる。そんな第7話は、地上波を含めた全チャンネルの女性視聴層で全年齢1位を達成し、40代女性の視聴率は最高14.5%まで跳ね上がった。

視聴率の自己記録更新はその後も続き、第8話(1月12日放送)では初めて平均視聴率が11.3%と二桁に。第9話(1月18日放送)11.5%、第10話(1月19日放送)14.6%、第11話(2月1日)14.2%と順調な推移を見せた。この頃からブームといわれる注目を集めるようになる。

キスシーン&バックハグが視聴率の起爆剤に

第3話や第7話で証明されているように、キスシーンは視聴率を跳ね上げる重要な要素となるが、『愛の不時着』では“切ないバックハグ”も大きな話題となった。2月2日に放送された第12話だ。

(画像=tvN)『愛の不時着』第12話

第12話では、リ・ジョンヒョクとユン・セリが再び別れを準備する姿が描かれた。誕生日をささやかに祝われたユン・セリは、感情を抑えきれず涙を流し、リ・ジョンヒョクは彼女を後ろから抱きしめる。「誕生日のたびに今日を思い出しそう…」と悲しむ彼女に、リ・ジョンヒョクは「この世の中に私が愛する人が生きていてくれて、ありがたい。だからこれからも良い日々になるはずだ」と語りかける。

温かい言葉と切ないバックハグは、視聴者の涙を誘い、第12話の美しいエンディングシーンは『愛の不時着』を代表する名場面となった。

バックハグが印象深かった第12話は平均視聴率15.9%、最高視聴率17.4%を記録。40代女性視聴率が最高24.8%となり、“国民的なラブコメ”という修飾語つきでメディアに報じられるようになった。

第13話(2月8日放送)を平均14.1%とした『愛の不時着』が再び自己最高視聴率を更新するのは、第14話(2月9日放送)だ。

(画像=tvN)『愛の不時着』第14話

平均17.7%、最高19.0%と大台を現実的にした第14話では、自分のために命を投げ捨てたユン・セリを非難していたリ・ジョンヒョクが最終的には涙を流し、彼女を抱きしめるシーンが注目を集めた。リ・ジョンヒョクは「愛している。この言葉を言えなくなると思って、本当に怖かった」と、秘めていた思いを告白。生死の岐路に立たされた絶望的な状況から抜け出し、再び一緒になった2人の熱い思いは視聴者に深い余韻を残した。

『トッケビ』超えで有終の美

第15話(2月15日放送)でも平均視聴率17.1%と堅調な人気を維持した『愛の不時着』は、2月16日の放送で最終話を迎えた。前述したように平均視聴率21.7%、最高視聴率24.1%という驚異的な数字を叩き出し、歴代のtvNドラマの最高視聴率を更新した。

それまでtvNのドラマで記録を保持していたのは、コン・ユ主演のヒット作『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』で、最高視聴率20.5%だった。『トッケビ』は今も高い人気を誇る韓国ドラマといえるため、『愛の不時着』も韓国ドラマ史に残る名作となることは間違いないだろう。

最終話の視聴率は当然ながら、地上波を含めた全チャンネルの同時間帯1位となり、“国民的なラブコメ”は有終の美を飾った。

(画像=tvN)『愛の不時着』最終話

第1話の6.1%から実に3.5倍も視聴率を引き上げ、最終話を21.7%で締めくくった『愛の不時着』。これほど視聴率が急上昇していくドラマは、近年では珍しい。その要因は出演者の人気やテーマの奇抜さなどさまざまだろうが、視聴率を分析すると、回を重ねるごとに視聴者を虜にする中毒性の高い作品であったことがはっきりとわかる。

それは日本や海外のドラマファンにとっても同じだろう。『愛の不時着』は一度観たら抜け出せない魅力で、新しい韓国ドラマ史を描いている。

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