韓国フィギュアの“希望”となったユ・ヨン(15)を銀盤に導いたのは、彼女の母親だった。
シンガポールに住んでいたときのこと。母イ・スクヒさんは6歳になった末娘ユ・ヨンの手を握り、室内アイスリンクに向かった。
暑い国なので娘が涼しい場所で運動できたらという思いもあったが、イさんが当時、世界のトップに立っていた女王キム・ヨナの熱烈なファンであったからだ。
軽い気持ちで連れていったアイスリンクで、ユ・ヨンは優れた適応力を見せた。最初は誰もがそうであるように何かをつかまりながらスケートを始めたが、すぐに手を離して氷の上で遊び出した。
専門家ではなかったが、娘のバランスの良さは目立った。ユ・ヨンが本格的にフィギュアを始めるきっかけだった。
ユ・ヨンは2月12日、泰陵(テルン)選手村のアイスリンクで夢について話した。
彼女は「(キム・)ヨナ姉のように金メダルを取ることが子供の頃からの目標であり、夢だ」と、繰り返し強調した。
ユ・ヨンは去る2月8日、ソウルの木洞(モクトン)アイスリンクで行われた2020国際スケート連盟(ISU)四大陸フィギュアスケート選手権で、日本の紀平梨花に続く銀メダルを獲得した。
自分の理想像であるキム・ヨナが2009年に同大会で優勝して以来、韓国選手としては11年ぶりの快挙だった。
必殺技であるトリプルアクセルが功を奏した。3周半回転するトリプルアクセルは、男子選手でもクリーンに決めることが難しい高難度のジャンプだ。韓国女子選手では、ユ・ヨンだけが駆使している。
“キム・ヨナの後継者”としてオリンピックの金メダルを目指すユ・ヨンの当面の目標は、トリプルアクセルの完成とクワッドラッフル(4回転ジャンプ)の挑戦だ。
怪我の恐れもともなう挑戦だろう。ユ・ヨンは完成度を高めるためであれば、自分の選手生命にもかかわったとしても後悔はないという強い意志を見せた。まだ幼いが、目標は明確だ。
ユ・ヨンは「高難度のジャンプを続けていると、体への負担が大きい。選手生命が短くなるかもしれない。でもやり遂げようと考えている。やらなければ目標を達成することができない」と、気丈に話した。
娘の最も熱烈なファンであり、後援者である母イ・スクヒさんは「数日前、クワッドラッフルをクリーンに決めた」と、こっそり教えてくれた。
目標を達成するために、昨年から筋力強化に集中している。回転力を身につけようと、地上での訓練にも余念がない。
ユ・ヨンは「たくさんの努力が必要だと思う。十分な回転をつけるために、速いスピードがついてこなければならない。ハーネス(ワイヤーベルト)を装着してイメージする訓練も続けている。アイスリンクで1度できたからといって、成功とはいえない。数年をかけて少しずつステップアップする過程が必要だ」と説明した。
ユ・ヨンを支えるのは、日本の濱田美栄コーチだ。ユ・ヨンは濱田コーチの励ましのなか、高難度技術の完成度を引き上げた。
今回の四大陸選手権で金メダルを獲得した紀平梨花も、濱田コーチの指導を受けている。ユ・ヨンは「一緒に練習して学んでいる」と微笑んだ。
ユ・ヨンの次の大会は来る3月、カナダのモントリオールで開催される世界選手権だ。
彼女は「四大陸選手権よりも大きな大会だ。緊張する。でもクリーンな演技でシーズンを終えたい」と述べた。
シーズン中は濱田コーチがいる日本で主に練習するが、シーズンが終わると米コロラド州に移動する。
ユ・ヨンは世界選手権を終えた後、コロラド州で別のコーチと呼吸を合わせ、オフシーズンには4回転ジャンプのトレーニングに励む計画だ。
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