韓国でKリーグブームは、以前にも数回起こった。
オールドファンは誰もが覚えている1998年フランスW杯直後が、その発端といえる。
アン・ジョンファン、コ・ジョンス、イ・ドングッの“トロイカ”を中心に、他のスター選手まで加勢し、陸上トラックに観客があふれる珍現象が起きた。蚕室(チャムシル)オリンピック主競技場に6万人の女性ファンが駆けつけたなかで開かれたオールスター戦は、アイドルのコンサート場を彷彿とさせた。
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2002年の日韓W杯直後も同じだった。“4強神話”の勢いそのままに、韓国代表選手たちが所属クラブに戻って大活躍した。ワールドカップの熱気がそのまま韓国プロサッカーにつながったわけだ。
しかし、これまで2~3回ほど起きたKリーグのブームは、1年以上、継続することはなかった。突然のようにブームとなるが、バブルがはじけた後の“後遺症”は深刻だった。スタンドはブーム前よりも空きが目立った。サッカーを観戦するファンはいないのに、各クラブはそれでも成績だけに没頭した。
最近、Kリーグに“興行ブーム”が起きている。
1部も2部リーグもシーズンの3分の1ほどを残しているが、すでに前年の有料観客数を突破した。ソウルFC、全北現代、水原三星、蔚山現代などの企業クラブはもちろん、大邱FCや仁川ユナイテッド、城南FCと道・市民クラブまで観客席を埋めている点は歓迎すべきことだ。
かつてKリーグの好況には、いくつかの共通点があった。まずスター選手の存在で、次にワールドカップ直後など、国家代表のメジャー大会出場時期と重なっているという点だ。つまり、スターやブームに敏感な10代の若者層がKリーグの興行を導いたわけだ。
それが今では、特定クラブではなくKリーグが全体的に熱気を帯びており、家族でスタジアムを訪れるファンも増えている。既存のKリーグブームとは、異なる姿を見せている。
だからこそ今のKリーグブームは、“まだ”サッカー関係者とファンなど利害関係者だけ認識する“内輪”のブームであるという点を強調したい。行く道はまだ遠いという意味だ。
1部リーグに限定すると、平均観客数は8000人、客単価7000ウォン(約700円)ほどなのだが、その程度では“規模の経済”を達成するのは難しいというのが韓国サッカー界の考えだ。サッカー界では平均観客数1万人、客単価1万ウォン(約1000円)になってこそ、産業としての基礎を固めることができると見ている。
もちろん観客が大幅に増えたことは、喜ばしいことだ。「Kリーグを生かそう」という声が出てくるたびに、好循環の出発点として観客の増大が挙げられるが、今それが少しずつ実現している。
各クラブの認識の変化も肯定的だ。以前のように、成績と保身だけを考えるフロントは去った。Kリーグのコンテンツ価値を高め、地域密着を実践する人たちが各クラブのフロントに布陣し始めた。情熱を持って働く彼らの任期保障や、DGB大邱銀行パークのような施設投資が行われれば、平均観客数1万人+客単価1万ウォンに近づいていくことだろう。
その時は多くの国民も、Kリーグブームを体感すると信じている。
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