ナショナルリーグ最高の投手と、アメリカンリーグ最高の打者の対決は、長い余韻を残した。去る6月11日(日本時間)に勝負を繰り広げた本人も、ボール一つひとつをはっきり覚えていた。
ロサンゼルス・エンジェルスのマイク・トラウトが、ロサンゼルス・ドジャースのリュ・ヒョンジンの“カットファストボール”に苦戦した瞬間について語った。
トラウトはドジャース戦後、現地メディア『Orange County Register』とのインタビューで、「リュ・ヒョンジンはすばらしい。私にとんでもないボールを投げた。彼が投げた3つのスライダーは、すべて異なっていた。リュ・ヒョンジンが素晴らしい投手である理由だ。リュ・ヒョンジンは優れた球威を持っている」と話した。
トラウトは“スライダー”と判断したが、リュ・ヒョンジンがトラウトに投げた球種は、正確にはカットファストボールだ。
リュ・ヒョンジンはスプリングキャンプ当時、カットファストボールより遅いが横への変化が激しいスライダーを使っていたが、制球に苦労を感じてスライダーを封印した。今シーズンのリュ・ヒョンジンは直球、チェンジアップ、カットファストボール、カーブの4つの球種を駆使している。
リュ・ヒョンジンとトラウトが対決した3打席を振り返ってみると、トラウトの言葉を理解することができる。
2人は同日の試合で1回裏と3回裏、そして5回裏と3度対戦した。最初の対決は、リュ・ヒョンジンに運が向いた。リュ・ヒョンジンが投げた直球が真ん中に集まった。トラウトはリュ・ヒョンジンの失投を見逃さず、ラインドライブの打球を放ったが、ボールはレフトのジョク・ピーダーソンのグローブに向かった。
2度目の対戦から、リュ・ヒョンジンのカットファストボールの真価が明らかになった。
3回裏、リュ・ヒョンジンはトラウトに直球とカットファストボールを混ぜて投げた。トラウトは直球のタイミングでスイングしたが、リュ・ヒョンジンのカットファストボールは絶妙にバットの下に折れた。リュ・ヒョンジンがトラウトから三振を奪った瞬間だった。
3度目の対戦は、さらに劇的だった。2死1、3塁という場面でトラウトを迎えたリュ・ヒョンジンは、またもや直球とカットファストボールで勝負した。強打者との対決で同じボールを投げ続けるのは稀だが、それほどカットファストボールに自信があったと見ることができる。
リュ・ヒョンジンは、相次いで内角に直球とカットファストボールを投げた後、フルカウントからカットファストボールで再びトラウトを空振り三振に切って落とした。
リュ・ヒョンジンのカットファストボールは投球時の腕の動きが直球と同じで、球速も時速4マイル(6.5キロ)ほどしか差がない。ホームプレートに到達する直前まで直球と同じ軌跡だが、ホームプレートの前で右打者の内角に急激に曲がる。直球を狙った打者であれば、トラウトのように空振りするしかない。
すべての投手が新しい球種を追加し、進化を夢見る。2015年に肩の手術を受けたリュ・ヒョンジンは再びメジャーリーグの舞台に上がるために、カットファストボールを準備した。 2017年シーズンからカットファストボールを使い、2018年シーズンには完全に持ち球にした。球速は直球とチェンジアップの間で、描く軌跡はチェンジアップと正反対のカットファストボールを使いながら、効率的な投球を続けた。
リュ・ヒョンジンは、ここで満足していなかった。