優勝の感想を聞くと、大粒の涙を流した。通訳をしていたマネージャーも一緒に泣いた。歓喜はもちろん、10年以上にわたって自分を後押ししてくれた家族と知人の温かい手がその瞬間に感じられ、“メジャークイーン”は涙をこぼした。
生涯初の米国女子ツアー優勝を果たしたイ・ジョンウン6だ。
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イ・ジョンウンは6月3日(日本時間)、メジャー大会「全米女子オープン」で初優勝を飾った。韓国人選手としては歴代10人目の同大会優勝者で、デビュー初優勝を全米女子オープンで達成した6人目の韓国人選手となった。自分の象徴といえる「6」が幸運をもたらすとの思いが通じたかのように、通算スコアは6アンダーであった。
授賞式のインタビューでイ・ジョンウンは、優勝の感想を問う質問に大粒の涙をこぼした。レッスンプロになれば食べていけるだろうという考えでゴルフの道を歩み始めた彼女だけに、最高の大会で優勝トロフィーを手にしたことに感動を禁じ得ない。
イ・ジョンウンは公式記者会見で、「家が裕福ではなかったので、ギリギリのゴルフをした。お金を必ず稼がなければならないという考えが、とても大変だった。韓国で3年間ツアー生活をしてアメリカに渡ったが、環境も良くて楽しみながらゴルフをしている。アマチュア時代が思い出され、涙が出た」と、涙の理由を明かした。
小学校2年生の頃に初めてゴルフクラブを握ったイ・ジョンウンは、家庭の事情から5年生でゴルフをやめた。そして中学3年生のとき、再びゴルフクラブを握った。故郷である全羅南道・順天(スンチョン)には当時、女性のレッスンプロがおらず、セミプロになれば生活できると考えたことが、ゴルフを選択した理由だった。
イ・ジョンウンは優勝インタビューで、「ラーメンが本当に好きなので、優勝したら必ずラーメンを食べるという目標を立てた。これで韓国ラーメンを食べることができる」と話した。素朴で小さな目標を設定したのも、彼女の子供時代の影響だろう。
女子選手としては珍しく、100kgのバーベルを持ってスクワットをするほどの体力を作り、たしかな勝負根性で頭角を現した。稼がなければならないというプレッシャーも強かったが、彼女は「必ず成功して私を助けてくれた方々に報いたい」と、トレーニングをおろそかにしなかった。
ゴルフ選手を目指して2年が経った2014年、アマチュア大会のベイクリーク杯で優勝し、代表常備軍に名を連ねた。2015年にはホシム杯を制し、韓国代表として光州ユニバーシアードで2冠王となった。それからはエリートコースを進んだ。
ユニバーシアード後、韓国女子プロゴルフ(KLPGA)準会員のテストに合格し、着実に段階を踏んで2016年、韓国女子ツアーで新人王を獲得。自らの時代を切り開いていく。2017年には賞金女王と大賞、最多勝、平均ストロークだけでなく、ベストプレーヤーと人気賞まで独占し、韓国女子ツアーの頂点に上りつめた。
2018年も賞金女王と平均ストローク1位となり、米国女子ツアーのシード権をかけた「クォリファイング(Q)シリーズ」も首位で突破。2週間で144ホールを回る強行軍を黙々と耐え抜いた秘訣は、幼い頃からしっかりと鍛え上げてきた鋼の肉体のおかげだった。
車椅子生活の父親と離れて暮らさなければならないことから、アメリカ進出をためらっていたイ・ジョンウンは、「気楽にゴルフをしてみよう」という心情で米国女子ツアー進出を宣言した。今シーズンの目標を「予選落ちなし」と定めたイ・ジョンウンは、シーズン14大会目となった全米女子オープンで優勝トロフィーを胸に抱き、今後10年間“気楽に”ゴルフができる機会をつかんだ。
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