引退記者会見に“涙”は外せない要素だ。現役引退を発表した元韓国代表FWイ・ドングッ(41、全北現代モータース)の去り際もそうだった。
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10月28日に全州ワールドカップ競技場で行われたイ・ドングッの引退記者会見は、開始前から張り詰めた空気が漂っていた。
クラブ関係者は皆表情が重かった。去る2009年の加入から11年間チームを象徴してきた人物が去るだけに、厳粛さも感じられたほどだ。
結局、会見が始まって早々に泣きそうになる人が現れた。ペク・スングォン団長だ。
花束を渡した後、祝辞を送ったペク団長は「イ・ドングッ選手に敬意を表する。今この瞬間も、引退するという事実が信じられない。チームの大黒柱でありながら、リーダーとしての役割をまっとうした」と話すと、それ以上は言葉を詰まらせた。
しばらくして、ペク団長は「イ・ドングッ選手は生きる伝説であり、永遠のライオンキングとしてすべての人に永遠に記憶されるだろう」と発言を締めくくった。ベテランへの尊重と愛情がにじみ出た一幕だった。
また、ペク団長は「娘が結婚したときも泣かなかったのに、今日は涙が出た。それほど愛情が深いということ」と付け加えた。
続けて登場したキム・サンシクコーチも同じ表情だった。
普段はいたずら好きで冗談を楽しむというキムコーチは、「2000年のシドニー五輪で初めて会い、選手生活をともにした。20年間一緒に過ごしながら“ヒョン(兄さん)”、“トンセン(弟)”と呼び合っていたのに、コーチと呼ばれるようになって少しぎこちなかった。これからは昔のように“ヒョン”と呼んでほしい」とコメント。
そして、「仲間であり友人であり、家族のような存在だ。これからも変わらないだろう。一緒にできて光栄だという言葉を伝えたい」と震え声で伝えた。涙は流さなかったが、緊張した声からはどこか寂しげな彼の心境を感じ取ることができた。
同日、スタジアムには70人余りの取材陣が集った。彼らも、イ・ドングッの引退に上気した表情だった。
一部の記者は質問途中に感情がこみ上げる様子を見せ、イ・ドングッ引退への惜しさを表した。会見後には、最後の記念にセルフィーをお願いする取材陣も多かった。
そして、主人公のイ・ドングッも涙を流した。
こみ上げる感情をぐっとこらえてきたイ・ドングッだったが、家族の話で涙を流した。
イ・ドングッは「昨日は遅くまで両親と話をした」と話し始めたが、その後が続かなかった。水を飲んで涙を拭いても、一度高ぶった感情はなかなか収まらなかった。
しばらく時間を置いたイ・ドングッは、「父が引退式を行うというので、本人も引退したいと話していた。サッカーを始めるときから世話をしてくれた。30年以上やってきた。胸がじんと来た」と語った。
イ・ドングッの現役ラストマッチは、来る11月1日にホームで行われるKリーグ最終節の大邱FC戦を予定している。
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