プロ野球の世界において、いくら優れた資質を持つ選手がいても、球団のシステムや指導者と調和を成せなければ成長に支障が出るしかない。
韓国プロ野球のキウム・ヒーローズは去る10月7日、1次指名した徳寿高3年のチャン・ジェヨンと契約金9億ウォン(日本円=約9000万円)を締結した。
この契約金は、3年前に球団が「10年に一人の逸材」と評価した投手アン・ウジン(契約金6億ウォン=6000万円)を超え、韓国プロ野球全体で歴代2位に値する金額だ。
韓国プロ野球史上最高額の契約金を結んだ選手は、去る2006年、10億ウォン(約1億円)の契約金でKIAタイガースに入団したハン・ギジュが唯一だ。
ただ、体感の金額で言えば、ハン・ギジュよりチャン・ジェヨンの方が大きい。というのも、近年は1次指名者の契約金規模が2~3億ウォンで形成される場合が多いからだ。
ハン・ギジュの時代は1次指名者の契約金規模が今よりも高かった。2005年の新人キム・ミョンジェが6億ウォン(約6000万円)、ハン・ギジュと同期のユ・ウォンサンは5億5000万ウォン(約5500万円)。
現在、セントルイス・カージナルスで活躍するキム・グァンヒョンも、2007年のSKワイバーンズ入団時には5億ウォン(約5000万円)を受け取っていた。
それ以降も2011年にユ・チャンシクが契約金7億ウォン(約7000万円)、2013年にユン・ホソルが契約金6億ウォン(約6000万円)を受け取ったが、各球団は徐々に契約金の規模を縮小した。
そのため、アン・ウジンが久々に記録した契約金6億ウォンは、当分越えられない金額になると当時は評価されていた。つまり、今回の9億ウォンという高額な契約金は、キウムがチャン・ジェヨンに大きな期待を寄せている意味でもあるだろう。
とはいえ、チャン・ジェヨンがたちまちデビューシーズンから先発投手として活躍できるかは誰にもわからない。
スカウトの多くも、チャン・ジェヨンの才能を評価する一方で、彼が1軍の先発投手として定着できるまでは時間を要するとみている。
高校での記録を見ると、チャン・ジェヨンは今年、高校リーグで16.2イニングを消化し、11四球、4死球を記録した。防御率は5.29だ。高校1年時から150キロを上回る速球が売りだった反面、チャン・ジェヨンは投球バランスや制球面が課題とされていた。
また、チャン・ジェヨンは通常の高校有望株と異なる道を歩んできた。彼は、高校時代から徹底的な管理下でマウンドに上がってきたのだ。
ある首都圏球団のスカウトは「チャン・ジェヨンは実戦で変化球の割合を制限された。試合によっては、終始ファストボールを投げる場合もあった。高校では徹底的にひじと肩を守られた」とコメント。
続けて、「投手としての経験が多い方ではないが、投球時の弾力や重心移動を見ると、そのポテンシャルは無限大だ。もし韓国で大谷翔平のような160キロ投手が現れるのならば、それはチャン・ジェヨンになるだろう」と太鼓判を押した。
キウムは、今後数シーズンの優勝候補に挙げられるほどの戦力を構築した。主力遊撃手キム・ハソンがメジャーリーグに進出する可能性もあるが、外国人選手の獲得や若手投手の成長によってその穴は埋められる。
また、チョ・サンウやハン・ヒョンヒ、イ・スンホ、チェ・ウォンテら代表級の選手が着実に成長し、チャン・ジェヨンも潜在力を爆発させられれば、キウムは韓国プロ野球屈指の投手陣を誇るチームとなれる。
しかし、アン・ウジンの前例があるキウムは、チャン・ジェヨンの成長を辛抱強く待つ必要がある。
というのも、多くの専門家はアン・ウジンの投球フォームが、肩やひじに深刻な負傷を誘導する可能性があると指摘している。
実際、アン・ウジンはプロ入団後から絶えず負傷と向き合っている。キウム率いるソン・ヒョク監督も、アン・ウジンのための中長期的なプランを立てている状態だ。
当初、キウムはアン・ウジンを先発として育成する計画だったが、ソン監督は中継ぎで彼を登板させ、負傷のリスクが軽減される投球フォームを身に着けてもらえるようにしている。
これまでも、キウムは若手有望株を即座に1軍で起用させた。だが、その投手の大半が後に負傷し、リハビリに数カ月を要する空白期間を余儀なくされていた。
チャン・ジェヨンはキウムで大きな飛躍を遂げる可能性がある。それを実現するためには、チャン・ジェヨン自身の努力と同時に、キウムの徹底的なプラン構築が求められる。
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