「何も考えが浮かばない。2位だけは守ろうと思ったが、運が良かった」
“メジャークイーン”となったイ・ミリムは、優勝の瞬間も淡々としていた。彼女は「信じられない。“私が頑張ったんだ”という思いだけが浮かぶ」と、戸惑うような表情を見せた。
歴史に残るほどの劇的な逆転優勝だが、喜びを全身で表現することもできなかった。言葉通り、慎重に池に飛び込む優勝セレモニーでも優勝を実感できていない彼女の姿が垣間見えた。
イ・ミリムは9月14日(日本時間)、米カリフォルニア州のミッションヒルズCCで行われた米国女子ツアーのメジャー大会「ANAインスピレーション」最終日、最後の18番ホール(18番)で嘘のようなチップインイーグルを記録して首位(通算15アンダー273打)に並び、ブルック・ヘンダーソン(カナダ)、ネリー・コルダ(アメリカ)とのプレーオフを1ホール目で制して優勝した。
トップに2打差の3位で最終日を開始したイ・ミリムは、最終日だけで3度のチップインを成功させた。彼女は「2回までは経験があるが、3回は初めて」とし、「17番ホールがボギーだったので、18番ホールはバーディーで2位になれればと考え、大きな欲はなかった」と笑った。欲を出さないでいると、イーグルがプレゼントのように舞い降り、劇的なプレーオフにつながった。
プレーオフ1ホール目でバーディーを記録し、生涯初のメジャー優勝に輝いた彼女は、賞金46万5000ドルを手にした。イ・ミリムが米国女子ツアーで優勝したのは、2017年3月の「キア・クラシック」以来3年6カ月ぶりで、通算4勝目だ。
イ・ミリムの優勝によって、韓国人選手は米国女子ツアーのメジャー大会を10年連続で優勝する“珍記録”を樹立した。ANAインスピレーションは昨年のコ・ジンヨンに続き、2年連続で韓国人選手が“池ダイブ”することになった。
イ・ミリムは「プレーオフを通じては初めての優勝となったが、決まった瞬間も何も考えが浮かばなかった。良い成績を出せた理由」とし、「ショットが良くないなど最終日が一番大変だったが、アプローチに運がついてきた」と謙虚に話した。それとともに「今日一日は結果が良かったが、まだ足りない部分が多い。補完しなければならないようだ」と、さらなる高みを目指すことを約束した。
ANAインスピレーションは、優勝者がキャディーや家族などと一緒に池に飛び込む優勝セレモニーがある。キャディーが爽やかに池に飛び込む瞬間、イ・ミリムは躊躇しながら慎重に体を濡らした。彼女は「水が怖いわけではないけど、池が深く見えてちょっと怖かった」と笑った。
彼女は「メジャー大会だからと、特別な考えはなかった。メジャーでも他の大会でも同じだと思っていたので、大きなプレッシャーもなかった」とし、平常心が優勝の原動力だったことを明かした。
そんなイ・未リムの平常心の源は、不断の練習にある。過酷なトレーニングの影響で彼女の手首は疲労骨折を経験し、そのためにインパクトの瞬間、不要な手首の動きが習慣のようについてしまったほどだ。努力は裏切らないという格言を体現したイ・ミリムが、メジャークイーンとして復活した。
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