今から2年前の2018年、メジャーリーグのスプリングキャンプの主人公は大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)だったいっても過言ではなかった。
そうなるしかなかった。ベーブ・ルース以来、約100年ぶりに最も完成度の高い“投打兼業”の選手が世界最高の舞台に進出したからだ。米メディアはベーブ・ルースの生まれ変わりのように大谷翔平を見つめ、彼の一挙手一投足がヘッドラインを飾った。
しかし、このままでは大谷の二刀流は幻想のものとなる。
2019年に続き、今季もすでに大谷がマウンドに上がる姿を見ることが難しくなった。2018年10月に右ひじ靭帯再建手術を受けた大谷は、当初は新型コロナの影響で遅れた開幕の最大の受益者になると見られた。今季メジャーリーグが7月末に開幕されることで準備期間が増え、60試合にシーズンが短縮されたことで投打兼業の負担も減るだろうとの予測が多かった。
ところが、いざ蓋を開けてみると、結果は衝撃的だった。
過去2度の先発登板で球速の低下と不振に苦しみ、これ以上に悪い成績を残せないほどの記録だけを残した。2試合合計で1.2イニングだけ消化し、7点を許し、防御率は37.80に達した。初登板だったオークランド・アスレチックス戦ではアウトカウントを1つも取れず、5失点した。剛速球を失ったまま2度目の先発登板でも、早期降板となった。
泣きっ面に蜂で、負傷まで発生した。『USAトゥデイ』のボブ・ナイチンゲール記者は8月4日(日本時間)、「大谷が診断の結果、右腕回内勤炎症を患っていることがわかった。ボールを投げるためには4週間から6週間が必要だ。シーズン終了まで8週も残っていないため、以前の登板が大谷の今年最後の登板になった」と伝えた。
つまり2019年に続き、今年も大谷のポジションは「指名打者」で終わる見込みだ。ナイチンゲール記者は「大谷は現在、チームと一緒にシアトル遠征に出た。指名打者としては試合を消化することができる」とした。
今シーズン、大谷は27打数4安打(打率0.148)、2本塁打、7打点、OPS(出塁率+長打率)0.586を記録している。シーズン序盤で30打席も消化していないが、打席での活躍も過去2年間より少ない。
そもそも最初から不可能な課題に取り組んだのかもしれない。
メジャーリーグの初年度だった2018年も、大谷は投手としてシーズン完走できなかった。打者としては打率0.285、22本塁打、61打点、OPS 0.925と活躍したが、先発投手としては10試合の出場にとどまった。
51.2イニング、4勝2敗、防御率3.31と記録上は優れたが、6月初めまで先発ローテーションに入り、3カ月ほどマウンドに上がることもなかった。9月に1度先発登板した後、投手としてのシーズンを終えて、手術台に上がった。打者として試合に出た2019年には、打率0.286、18本塁打、62打点、OPS 0.848を記録した。
投手と打者は単純に、ポジションが異なるだけではない。練習法からコンディション調整まで、すべての部分において完全に違うプロセスをたどる。実際に多くのトレーナーが日本プロ野球時代から大谷の二刀流を否定的に見た。負傷を避けることができないという視線が優勢だった。
何人かの専門家は、大谷の投打兼業がメジャー進出は、本当のポジションを決める過程になると見ていた。投手と打者のどちらのポジションでより優れた活躍を広げることができるかをチェックし、メジャーでは1つのポジションに専念するという予想が多かった。
しかし大谷は、メジャーリーグでも二刀流を固持した。2017年冬、メジャー 30球団が大谷の争奪戦に乗り出したなかで、大谷は投打兼業を全面的に支援することを約束したエンゼルスの手を握った。
メジャーのスカウトは投手大谷をサイ・ヤング賞候補、打者大谷はレギュラー級と評価した。メジャー進出前は打者よりも投手としての評価が高かった大谷だが、少なくとも今シーズンは二刀流ではなく、一刀流に専念するしかなくなった。
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