新型コロナウイルス感染症の影響で“非接触”の時代にある中、試合中に倒れた選手に手を差し伸べられなかった主審が申し訳ない気持ちを表した。
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5月10日、李舜臣総合運動場で2020シーズンのKリーグ2(2部)第1節の忠南牙山FC対富川FC戦が行われた。
この試合のあるシーンが、海外メディアから大きな注目を集めた。
前半6分、忠南牙山のペナルティボックス付近で富川のブラジル人FWバイアーノ(25)がファウルを受けて転倒した。
転倒したバイアーノは、起き上がろうとした近くにいたチェ・グァンホ主審に手を差し出した。これはサッカーの試合中なら良く見られる光景だろう。
しかし、チェ主審はバイアーノに「すまない、(手を)つかめない」と言った。韓国サッカー協会や韓国プロサッカー連盟が示した新型コロナウイルス感染症の予防指針のためだ。とっさに手を差し出したバイアーノもすぐに状況を察し、他人の手を借りることなく自ら立ち上がった。
この場面は、Kリーグを中継する全世界36カ国で放送された。
スペインメディア『マルカ』は当該のシーンを取り上げ、“ニューノーマル”時代に対処する望ましい行動と紹介し、称賛を送った。同メディアは「韓国ではすでに“ニューノーマル”時代が始まっている。“ニューノーマル”は現実だ」と説明している。
海外メディアから関心を集めたチェ主審は5月11日、本紙『スポーツソウル』との電話インタビューに応じた。
チェ主審は話題を集めた当時のシーンを振り返り、「手を差し伸べられず申し訳なかった。あのとき、起き上がったバイアーノに“新型コロナ感染予防のため、手を差し伸べられずすまない”と伝えた。次は必ず手を差し伸べたい」と話した。
チェ主審は主管団体から「なるべく不必要な会話や接触を抑えよ」という方針を伝えられ、実践に移した。
彼は「審判のせいで選手が被害を受けないよう気を付けた。外国人選手だから(あの行動をとったわけ)ではなく、例え韓国人選手だとしても同様だったはずだ。開幕節で世界中が見守っていたので、最大限守れることは守ろうと努力した」と話した。
主審も選手と同じくグラウンドを走り回るため、瞬時に新ルールを思い浮かべることは容易ではないはずだ。とはいえ、主審はグラウンド上の判官として公平性を保つために努力している。
現在、Kリーグが全世界から注目されていることから、チェ主審はこう話す。
「走ると呼吸が上がるから集中しづらい。それでも審判間でコミュニケーションを取り、選手たちに“唾吐き”を減らすことをお願いした。選手たちも苦しい場面で普段の習慣が出てしまうが、目に見えるたびに“全世界が見守っているから気を付けよう”という趣旨で認知させている」
本来の開幕日から約70日間も延期がなされたため、選手同様に審判もコンディション管理に困難を極めた。新型コロナの影響で体力の維持もままならなかった。
それでも、政府の“社会的な距離置き”指針の緩和によって、2週間の実戦経験を積んだ後、開幕節を迎えることができた。
しかし、今誰よりももどかしい思いを抱えているのはスタジアムに入場できないファンだ。
チェ主審はファンの気持ちも思いやり、「忠南牙山対富川の試合中、山に登って応援していた観衆もいた。そうした方々を見て、長い間準備してきた選手の努力が無駄にならないよう、我々も公正にベストを尽くさなければならない」と誓った。
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