「若い選手だから、横で静かに見守ってあげた方がいいと思う」
ソン・フンミン(トッテナム)は、満19歳でドイツ・ブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘン1軍デビュー戦を行ったチョン・ウヨンに、8年前の自分の姿を重ねた。誰よりも熱い10代後半を過ごしたソン・フンミンは、後輩のチョン・ウヨンの気持ちと心理も、よくわかるようだった。
ソン・フンミンは11月29日(日本時間)、イギリス・ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われたUEFAチャンピオンズリーグのグループリーグ第5節インテル戦を終え、ミックスゾーンで取材陣の前に立った。
そこでチョン・ウヨンの話が出ると、ソン・フンミンの声に力が入った。“未完の大器”と呼ばれるチョン・ウヨンは前日、欧州ビッククラブの一つであるバイエルン・ミュンヘンの赤いユニホームを着て、アリアンツ・アレーナのグラウンドを踏んだ。それも、“夢の舞台”チャンピオンズリーグの舞台だった。
(参考記事:「ミュラーが“狂ったように走れ”と激励してくれた」欧州CLデビューした19歳チョン・ウヨンに直撃)
ソン・フンミンも後輩の胸躍るデビュー戦のことはよく知っていた。「(チョン・ウヨンのデビューは)韓国サッカーのためにもとても良いこと。世界的なチームでチャンピオンズリーグにデビューしたことだけでも祝うべきこと」と話した。
胸が一杯になるような表情をしたソン・フンミンは、慎重に本音を打ち明けた。「まだ若い選手だから、静かに見守ってあげた方がいいのではないか」という意見を示した。含みのある言葉だった。
ソン・フンミンとチョン・ウヨンは、いずれも高校時代にドイツのクラブから才能を認められ、1軍デビューに成功した。チョン・ウヨンは、仁川(インチョン)ユナイテッドのユースチームである大建(テゴン)高校に在学していた昨年6月、バイエルン・ミュンヘンと4年6カ月の契約を結んだ。
昨冬にU-19チームに合流して可能性を認められ、今年の夏は1・2軍を行き来しながら新シーズンに備えた。想像を絶するビッグクラブの競争のなか、チョン・ウヨンは特有の才能と誠実さを武器に、19歳で堂々と1軍デビューを果たした。
こうした成長の軌跡は、ソン・フンミンが先に描いた。年代別代表で頭角を現したソン・フンミンは、東北(トンブク)高校1年生だった2008年に韓国サッカー協会(KFA)の優秀選手海外留学プログラムの対象者に選ばれ、ハンブルガーSVのユースチームでプレーした。
父のソン・ウンジョンにサッカーを教えられたソン・フンミンの技術は格別で新鮮だった。2009-2010シーズンに満17歳で2軍チームがプレーする4部リーグで6試合(1ゴール)に出場。翌2010-2011シーズンに1軍入りした。
チャンピオンズリーグデビューは、チョン・ウヨンがソン・フンミン(満21歳/レバークーゼン時代)より2年早かったが、リーグデビューはソン・フンミンの方が早かった。2010年10月30日に満18歳3カ月22日でFCケルン戦に出場した。トップでスタメン出場し、前半24分にカウンターから相手GKの頭上を越す幻想的なデビューゴールも決め、韓国サッカーの新たなスターに浮上した。3週間後のハノーファー戦では初の1試合2得点も記録し、ソン・フンミンにスポットライトが当てられた。
翌年1月にカタールで行われたアジアカップ最終メンバーにも選出。10代にしてパク・チソン、イ・チョンヨンら韓国のスター選手たちとともにA代表でプレーした。
しかし、そんな喜びは“成長痛”になった。