究極的な趣旨には誰もが共感するが、粗悪な過程は時代錯誤だ。具体的な目標提示にも従わず、混乱が続いている。
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最近のKリーグは騒々しさを増している。
その理由に、新型コロナウイルス感染症の影響で、韓国プロサッカー連盟や蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)FC、釜山(プサン)アイパークが率先して事務局職員の給与返納を実施したからだ。
世界サッカー界の大半がストップ状態の中、リーグ開幕すらできない状況下で財政難を憂い、先んじて苦痛の分担を行ったことには拍手を送るべきだ。
しかし、事前に構成員の間で十分な合意も行わず、意図的な行政処理がなされたことによって、逆に非難の矢面に立たされているという。
匿名を希望したクラブAのある職員は、「色々と厳しい時期に苦痛の分担を行うことは理解できる。ただ、事前に推進過程の言及や、同意を求める過程が無ければならないが、一方的な通知のように感じられた。当然、気分は良くなかった」と明かした。
当初、欧州主要リーグを中心に新型コロナに伴う財政難が浮き彫りとなり、多くのクラブで選手や役職員の給与削減が行われた。
4月に入ってからはアジアの各リーグにも影響を与えた。4月6日にはJリーグの北海道コンサドーレ札幌の全選手が報酬の一部返納を発表し、次いで中国サッカー協会がプロ選手の給与を均等な比率で一時削減することを決めた。
この流れで、Kリーグにも苦痛の分担と関連した見解が行き交った。
だが、近隣国や欧州リーグとKリーグで事情が違うのは、リーグ構成員の間で新型コロナ感染者が発覚していないことだ。
Kリーグは公式戦こそ出来ていないものの、選手たちは正常通りトレーニングを続けている。つまり“労働”をしているため、給与削減といった措置を取ることが容易ではないのだ。
加えて、Kリーグは構造上自主的な収益が特に少なく、親企業(企業クラブ)や地方自治体(地方クラブ)から予算を支援される形態で運営されるため、他国のリーグと比べて給与削減が緊急な事案とならない。
ただ、親企業が経営難に陥ったり、地方自治体で高位公職者を中心に給与削減に賛同する雰囲気が醸成されたりしたことで、各クラブも負担を抱えざるを得なくなった。
クラブBの関係者は「一部のクラブはコーチ陣と(給与削減などを)議論したようだが、鋭敏になるほかなかった。特に(選手を率いる)監督が先んじて給与削減に賛同すれば、選手を圧迫する形となる。それがチームの雰囲気にネガティブな影響をもたらすのを憂慮する人が多かった」と話す。
結局、Kリーグは皮肉にも、選手ではなく職員が給与削減に賛同することになった。それでは、クラブ一般職員よりも高い年俸を受け取る選手が気を使うしかない状況が自然と作られる。これに対し、一部も「露骨な圧迫だ」と苦言を呈した。
それもそのはず、給与削減に参加した釜山アイパークのオーナーは韓国サッカー協会(KFA)のチョン・モンギュ会長であり、蔚山現代のオーナーは韓国プロサッカー連盟のクォン・オガプ総裁だ。
“KFA会長と連盟総裁が率先した”と解釈するしかないが、両クラブは同日ほぼ同時に報道資料で給与削減を発表した。そしてこの時期、KFAのある高位関係者は各クラブに連絡を回し、“苦痛の分担に賛同しよう”と説得を図っていたこともわかった。
クラブCの関係者は「こうした状況下で犠牲になる雰囲気を作るため、積極的に何かを推進することまではいい。ただ、方法があまり洗練されていなかったようだ」と失笑した。
もう一つの問題は目標提示とつながっている。釜山にしても「返納された給与でホーム試合運営や選手の支援に力を充てたい」と明かしていたが、まるで“職員が返納した給与を選手に回す”というニュアンスにも聞こえる。
大半の欧州クラブは選手自らが乗り出し、解雇の危機にさらされている職員を救うため給与削減を決めた。Kリーグとは正反対の状況だ。
また、20~30人規模に過ぎないクラブ職員が返納する給与はたいして大きな金額にならない。“ホーム試合運営や選手の支援”という目的を強調するにはとんでもないという反応だ。
先に給与削減政策を発表したKFAの方が目標は明確だ。
KFAはリーグや大会の中止で収益に打撃を受けた幼・青少年指導者や審判を対象に、3億5000万ウォン(日本円=3500万円)の“サッカー共生支援金”を用意したのだ。
支援対象者の選別に具体的な手続きを踏んでおり、規模も明確に算出されている。協会職員数は200人余りに達するため、支援金づくりの根拠も十分だ。
KリーグもKFAにならい、給与返納の目的を改める必要性があるだろう。
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