韓国オリンピック委員会(KOC)は政治集団のようだ。徹底した政治工学のなかだけで発言する印象を消すことができない。
2020東京五輪の開催に対して、カナダやノルウェーなど世界各国のオリンピック委員会が自分たちの声を上げている。
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しかし2009年に大韓体育会に統合された韓国オリンピック委員会は、「7月の正常開催を念頭に置き、滞りなく準備する」との原則的な立場だけを示している。
新型コロナウイルスが世界的大流行(パンデミック)となった状況では、オリンピック強行の意思をのぞかせること自体がナンセンスだ。国際オリンピック委員会(IOC)と日本が世界の人々に非難される理由は、本音と異なる言葉と行動である。
表面上では「選手と関係者の安全を最優先に考えている」としながらも、「完全な形でオリンピックを開催したい。まだ開幕まで4カ月も残っている」との立場を固守した。
新型コロナの猛威を見ていながらもオリンピック開催の意志を変えないだけでも、非難されて当然だろう。
もしオリンピックを延期するのであれば、複雑な問題を解決しなければならない。世界各国の事情も異なり、準備する選手たちのコンディション、天文学的な中継権料と広告費なども見直さなければならない。決して甘いことではない。
にもかかわらず、世界各国のオリンピック委員会は「公正性と安全性」を理由に、オリンピック延期の声を上げた。明らかな影響が予想されるが、国民と選手たちの安全のため、必ず延期しなければならないと声を高めているのだ。
しかし韓国オリンピック委員会は、IOCトーマス・バッハ会長が新型コロナ対応の最初のビデオ会議をしたときから、オウムのように同じ言葉だけを繰り返している。
種目代表として会議に出席した世界テコンドー連盟チョ・ジョンウォン総裁からIOC選手委員のユ・スンミン韓国卓球協会会長まで、「IOCの意見を支持する」との表面的な言葉だけだった。
ついには韓国国会までも、「現状では“スポーツ交流を通じて世界平和に貢献する”というオリンピックの目的を達成するのは難しい」とし、「韓国オリンピック委員会が日本オリンピック委員会(JOC)にオリンピック延期を公式要請しなければならない」と主張した。
4月15日に韓国で総選挙が行われ、難しい局面を迎えている政治家でさえ、コロナの世界的な感染拡大のなかでオリンピックを開催することに疑問を投げかけているのに、韓国スポーツ界の政策と実務を総括する大韓体育会は、何のアクションも取らずにいる。
複数の理由があるのだろうが、なかでも政治的な目的が最も大きく見える。
すでに2019年9月には、「東日本大震災で流出した放射能問題が完全に解決されておらず、オリンピックを延期しなければならないのでは」との質問に、「韓日関係の悪化など、政治的な理由でオリンピックをボイコットすることは、大韓体育会と韓国オリンピック委員会の存在を否定する行為」と一蹴した組織だ。
大韓体育会の関係者は、「真の“克日”はオリンピックに堂々と出場し、日本に勝ってメダルを獲得すること」などと、陳腐な意見を出したりもした。これらの発言に、選手の立場を代弁したり、真心がこもっていたりする感じはまったくしなかった。
その根底には、はるかに大きい下絵が描かれている。
韓国は2032年、北朝鮮と共催によるオリンピックを希望している。北朝鮮の安保状況を担保することができない状態で、オリンピック誘致に成功すると、いくつかの国が「安全」を理由にボイコットの動きを見せる可能性がある。
韓国オリンピック委員会は東京五輪の開催について「安全」を理由に声を出せば、後日、ブーメランとなって自分たちに戻ってくることを恐れているようだ。
ただ、そういった“恐れ”は、あくまでもオリンピックの誘致に成功した後の話だ。まだ心配する必要もない“恐れ”を感じている現状は、なんとも滑稽といわざるを得ない。
あまり洗練されているとはいえない韓国スポーツの行政の実態を考慮すると、過度な政治工学は逆風になる可能性がある。韓国スポーツ界の首長が自国選手の安全については傍観し、他国の顔色だけをうかがっているところを見ると、韓国スポーツの発展にも悪影響が出てくると思われる。
スポーツとスポーツマンは、純粋でなければならない。
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