韓国で「世紀の裁判」として関心を集めた、フェイスブック(Facebook)と韓国放送通信委員会による最初の法廷争いは、フェイスブックが勝利した。
裁判所は、フェイスブックが韓国の通信キャリアとのネットワーク使用料の交渉を有利に進めるために、わざと接続速度を遅延させた“故意”はなかったと判断したと見られる。
ソウル行政裁判所行政5部(部長判事パク・ヤンジュン)は8月22日、フェイスブックが放送通信委員会を相手に出した是正命令などの処分取り消し請求訴訟で、原告勝訴の判決を出した。
先立ってフェイスブックは2016年12月、SKブロードバンド、LGユープラスなど通信キャリアとの接続経路を香港に変更した。これにより、該当ネットワークを使用してフェイスブックにアクセスする利用者は、接続速度が落ちて、サービスの利用が不便になった。
当時、韓国政府が相互接続告示を改正し、トラフィック使用量に応じてネットワーク使用料を負担するように変更しながら、フェイスブックはSKブロードバンド、LGユープラスとネットワーク使用料の交渉を進めていた。
その際、フェイスブックがネットワーク使用料の交渉で有利な立場を占めるために、わざと接続経路を変更したのではないかという疑惑が浮上した。議論が続くと、最終的にフェイスブックは、2017年10月に接続経路を原状復帰した。
放送通信委員会は調査を経て、当時、通信キャリアとネットワーク使用料交渉を進めていたフェイスブックが、交渉を有利にするためにわざと接続速度を落としたと判断した。放送通信委員会は調査結果をもとに、2018年3月、フェイスブックに是正命令と課徴金3億9600万ウォン(約3960万円)を科した。
しかしフェイスブックはそれを不服として訴訟を起こし、同日、裁判所はフェイスブックの速度操作に故意性はないと判断した。フェイスブックの勝訴となった。
放送通信委員会は今回の判決を不服とし、いち早く控訴する方針だ。
放送通信委員会キム・ジェヨン事務処長は「すぐに控訴する」とし、「基幹通信事業者だけが通信の品質、利用者保護の責務を担っているわけではない。コンテンツ提供事業者(CP)であっても原因を作ったのであれば、その責任を負うのは当然だ」と指摘した。
続いて「自分たちが交渉を有利に持っていこうと、接続経路を国内から海外に迂回させたことは明らかに故意であり、悪質な側面がある」と批判した。
またキム事務処長は、「フェイスブックをはじめ、ユーチューブ、ネットフリックスなどの海外CPが国内利用者を人質にして、接続経路を今日はソウル、明日は香港、明後日はアメリカなどと迂回させても、利用者に対する阻害行為ではないというのは納得できない」とし、「必ず控訴して最高裁までに結論を出す」と明らかにした。
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韓国の通信業界は今回の判決について、心配と懸念を示しながら受け入れることができないという雰囲気だ。フェイスブックが接続経路を迂回させたことで利用者に被害が発生したにもかかわらず、それが認められないのであれば、類似の事例が発生したときに今回のことが先例となり、制約が生じるというのが理由だ。
通信業界のある関係者は、「利用者への被害という側面から類似の状況が発生したとき、利用者を保護することができる方法がひとつ消えた」とし、「今すぐ再発するとは言い切れないが、もしそのような状況が発生したとき、フェイスブックの事例が悪い先例として悪用される可能性がある」と憂慮した。
続いて「今回の判決は電気通信事業法違反かどうかが争点で、ネットワーク使用料との関連性は低いが、今回の判決によって今後フェイスブック、ユーチューブなどの海外CPがネットワーク使用対価と関連させて声を上げることができる」と付け加えた。
また他の業界関係者は、「今回の判決でフェイスブックを含むグローバルCPがネットワーク使用料の交渉で、使用料を下げなければ海外に接続経路を変更したり、消費者への被害を人質にしないかが心配」とし、「国会と政府が前に出て、利用者が被害を受けたとき、どのように処罰するかについての法的根拠が早急に用意されなければならない」と述べた。
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