韓国の大手保険会社であるハンファ損害保険が、孤児になった小学生に対して数千万ウォン(数百万円)規模の求償権請求訴訟を起こして、世論から猛烈な批判を浴びた末、訴訟を取り下げた。
事の始まりはこうだ。
12歳のA君の父親は2014年にオートバイ運転中の事故で死亡した。A君の母親はベトナム人で、事故前にベトナムに出国していて連絡が途絶えていた。
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ハンファ損保はA君の父親の死亡保険金1億5000万ウォン(約1500万円)を、A君の母親とA君にそれぞれ6対4の割合で支給することにした。
1億5000万ウォンのうち、 6000万ウォンはA君の後見人(80代の祖母と推定)に預けられ、残りの9000万ウォンはA君の母親に支給されることになっていたが、A君の母親が現れていないという理由で、ハンファ損保が6年間保有。A君は現在、孤児院で暮らしながら、週末ごとに祖母の家に通っている。
ところが最近、ハンファ損保がA君を相手取って訴訟を起こした。
父親のバイク事故の相手側だった自動車に同乗していた者の治療費と示談金として、ハン損保が使った5300万ウォン(約530万円)のうち、約2700万ウォン(約270万円)をA君に請求するという内容だ。
これによってソウル南部地裁は去る3月12日、A君にハンファ損害保険が要求した額を返済し、完済するまで年12%の利子を支払うよう勧告するという決定を下した。
この話がネットを通じて広がると、大統領府の国民請願にもA君とハンファ損保に関する嘆願が登場。3月24日午後4時現在、4万8000人が署名するなど、急速に注目が集まっている。
請願の掲示者は「保険会社が6対4の割合でA君の母親に渡るべき9000万ウォン(約940万円)を握りながら、孤児になった子供に100%の割合で請求している」と指摘した。
「保険会社はA君の母親の消息がつかめていないことを知りながら、“母親が帰ってこなければ9000万ウォンは支給できない”と自分たちでそのお金を握ったまま、孤児院にいる小学生に対して訴訟を起こした。A君に対する救済策について考えてほしい」と要請した。
ハンファ損保の関係者は同日午後、「法的な消滅時効の問題があって訴訟を起こしたもので、遺族代表と子供(A君)の相続比率(40%)の範囲内の金額から一部下方修正された金額で和解することで合意し、訴えは取り下げることにした」と明らかにした。
この関係者は、A君の父親の死亡保険金に対する相続は、A君の母親とA君に6対4の割合で支給したが、求償権の請求はA君に100%を請求した理由については「相続人が多数で、一部の相続人と連絡が取れない場合、連絡が取れる特定人に100%を求償するのが慣例だ」と説明した。
ハンファ損保が握っているA君の母親に支給されるべき9000万ウォンは、A君が成人になったときに返してもらえる見通しだという。
業界関係者は「A君の母親が帰ってこない場合、A君が成人に至ったとき、母親の長期失踪届を出し、一定期間が過ぎれば死亡と決められ、母親の保険金をA君が受け取ることができる」と説明した。
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